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  [No.589] 28話 準決勝を懸けて 投稿者:照風めめ   投稿日:2011/07/20(Wed) 09:07:20   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
28話 準決勝を懸けて (画像サイズ: 400×500 18kB)

 風見杯も三回戦、言い方を変えると準々決勝に進んだ。既に準決勝進出者も一人決まっている。藤原拓哉だ。
 クラスメートなので同じ教室にいるが存在感も薄く、翔に無理やり言われて俺と戦ったことがあるが、初心者すぎて相手にならなかった。そんなヤツが準決勝進出だと?
 よっぽど相手が弱いか何かだろう。藤原の対戦は自分の対戦と被ったりなどして時間の都合が合わず見れていないが、……まさかな。
 準決勝ではないが準々決勝に長岡も進んでいる。俺と翔との対戦の後に興味を持って始めたという割には、見た感じ何かしらセンスがある。
 いざという時の運が優れている、言い方を変えれば運以外は並程度で特に秀でたものがない。もし長岡が準々決勝を勝ち、俺もコマを進めれば準決勝でぶつかることになる、か。面白い。
 時刻はすでに昼を回り二時。時間がいっぱいいっぱいだったため俺はまだ昼食を食べれていない。参加者の中にはコンビニでおにぎりやら何やらを買った奴がいるらしく、勝手に飲食禁止のエリアで食べている。そういう奴らは係員に注意され、飲食許可のエリアへ追いやられる。
 そして俺もその飲食許可エリアへ足を向けているのだが、目的は昼飯を取るのではなく人に会うためだ。
「こんにちは」
 ちょうど昼を終わらせたのか、薄っぺらいコンビニの袋を閉まっているレディーススーツ姿の女性に声をかける。
 身長はわずか百三十程度で俺とは頭二つ程の差があるため、必然的に相手は俺を見上げるようになる。
「あら、風見君」
「こんなところにいたんですね」
「さっきまでは見てたわ。大会は順調みたいね」
「お陰様で」
 彼女は株式会社クリーチャーズに所属している松野藍(まつの あい)。仕事柄、付き合いの多い関係だ。
 うちの会社、TECKは父が大学の仲間と共に作り上げた会社(母体は町工場)であり、一代で成した会社だ。
 しかし父と母が不仲で、父親が忙しいのを良いことに母親が俺を北海道の洋館に閉じ込めていた……らしい。詳しく知らないのはこれは小耳に挟んだ程度の話だからである。
 そんな感じで小学校、中学校と過ぎ去って行ったのだが、高校生になる前に突如父が俺の元にやって来て、俺を東京に連れて行ってくれた。
 その際俺をエンジニアとして買ってくれてTECKの特別社員として入社、学校が終わるとすぐに会社でいろんな機器の開発に携わることになった。
 そしてこの風見杯は俺にとって非常に重要なプロジェクトだ。この3D投影機を実戦で初投入する。
 このプロモーションが上手く行けば、後の一番の狙いであるプロジェクトがかなり良い状態になる。社運がかかっていると言っても過言ではない。
「でもこの調子だと風見くんが優勝しそうね」
「まだ油断は出来ません」
「いつになく弱気じゃない。何かあったの?」
「彼です」
 俺は翔のステージを指差す。相手は……、同じクラスのあの転校生か。黒川唯、彼女はここ一番では強くないが安定した実力の持ち主だ。
 丁度彼女がドンカラスをレベルアップさせたところらしい。レベルアップさせると、既に貼られてある月光のスタジアムの効果、超と悪タイプのポケモンは逃げるエネルギーがなくなる、を利用してベンチに逃がし、ヤミカラスへ交代させる。
 ドンカラスのポケボディー闇の遺伝子は、自分のヤミカラスはドンカラスに必要なワザエネルギーがついていればドンカラスのワザをワザエネルギーなしで使うことが出来る面白いものだ。黒川はこれを早速活かすつもりだ。
「へえ。注目選手みたいね」
「既に負けたことがあって」
「なるほどね。そこまでの実力者なら私も是非ともお手合わせ願いたいわ」
「いずれ戦える機会は来ますよ」
「そうだといいけど」
 翔のゴウカザルはヤミカラスの攻撃に耐えきり、逆に返しの番に怒り攻撃でヤミカラスを倒す。これで翔のサイドの残りが一枚になりリーチがかかる。
 そうだ。お前はこの程度で負けるようなやつじゃない。
「へえ。もう追い詰めたのね」
「デッキの回転の良さと、ここ一番の引きのよさ。それが魅力です」
「珍しいじゃない。過大評価」
「そう……かもしれませんね」
「彼の名前は?」
「奥村翔」
 翔の名前を告げると、松野さんの表情が一気に驚きに包まれる。知っているのだろうか? いや、翔を見て分からなくて名前だけしか知らない、か。だが翔は別に有名なプレイヤーでもないし、情報力には自信のある俺でも聞いたことがない。何を知っているんだ。
 一方でステージでは黒川はドンカラスLV.Xの闇の羽ばたきで攻撃し、翔のゴウカザルを撃破した。闇の羽ばたきはこのワザで相手を気絶させたとき、トラッシュのカードを手札に加えることができる効果を持つ。ここからでは何を加えたのかは見えないが、勿論良いカードを手にしたのだろう。両者サイド一枚、対戦もクライマックスに入る。
「あいつのことを知ってるんですか?」
「ええ。私の前任者の息子さんなの。非常に優しく朗らかな人だったんだけど、飛行機の事故で亡くなられて……。彼からはたくさんの事を学んで、私の恩人のような人だから」
「……」
 寂しそうな横顔の松野さんに何か声をかけようとしたが、何と言っていいのか声をかけられない。こんなケースに出遭ったことがほとんどないためにどう対処していいのか分からない。
 気安く言葉をかけるのだけはよろしくないことだけは分かっているし、適切な言葉が見つからないので沈黙を守る。
 目のやり場に困った俺は仕方ないので翔の試合に視線を移す。達人の帯をつけたバシャーモが、黒川のドンカラスLV.Xを強襲する。激しい炎が舞い、ドンカラスを一撃で吹き飛ばしてしまう。これで勝負は決まった。
 予定では翔と黒川の対戦が終わると俺の準々決勝の対戦が入ることになっている。招集の前にさっさと赴き、集中力を高めておきたい。
「さて、出番なので行ってきますね」
「風見君……」
「はい?」
「応援してるわよ」
「安心してください。そう簡単に俺は負けませんよ」
 応援、か。一人で勝手に戦うのとは違って、背中を後押しされている気がする。なんだか気持が落ち着いて、どことなく頼もしい。こういうのも悪くないじゃないか。
 なおさら負けられなくなった俺は、託された気持ちを背負って次の戦いへ赴く。



翔「今日のキーカードはドンカラスLV.X!
  やみのはばたきで敵を倒し、
  使ったトレーナーやサポーターをサルベージ(回収)!」

ドンカラスLV.X HP110 悪 (DP4)
無無 だましうち
 相手のポケモン1匹に、そのポケモンの弱点・抵抗力・すべての効果に関係なく、40ダメージ。
悪悪無 やみのはばたき  60
 このワザのダメージで、相手の残りHPがなくなったとき、のぞむなら、自分のトラッシュのカードを1枚、相手プレイヤーに見せてから、手札に加えてよい。
─このカードは、バトル場のエレキブルに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 雷+30 抵抗力 闘−20 にげる 0


(挿絵提供:びすこさん)


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