マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.863] 76話 不足 投稿者:照風めめ   《URL》   投稿日:2012/02/08(Wed) 13:06:06   33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「松野さんが倒れた今、松野さんの部下である僕、一之瀬和也が彼女の代役をします」
 拳を強く握りしめ、既に闘志を目に宿した奥村翔くん、不気味な笑みを浮かべている藤原拓哉くん、そしてまだ柱にもたれかかり明日のジョーみたいに燃え尽きている風見雄大くん。
 今の三人は皆が皆意識が違うようだ。別に問題があるわけではない。むしろ、面白いなと笑ってしまいそうなくらいだった。
「まずは藤原くん。君はこの次能力者の高津洋二と戦う事になる。彼の特徴は───」
「言われなくてもあのチビから聞いた。ワザの衝撃をそのままプレイヤーに与えるやつだろ?」
「そう。ただ、どの程度までダメージを与えれるかは分からない。勝てたとしてもどうなるかは分からない」
「けっ」
「彼のデッキはパワー型軸だがテクニカルな戦術も持ち合わせている。その辺も注意して」
「言われなくても分かってる。それだけか?」
「うん。健闘を祈るよ」
 藤原くんは露骨に舌打ちをすると先に対戦場の指定位置へ向かう。
「さて。次は奥村翔くん。言わずとも分かるだろうが山本信幸が相手だ。彼はほとんど自分のプレイングの全てを見せずに勝ち続けている」
「……」
「特にあのミュウツーLV.Xは強烈だ。相手がたねポケモンならばダメージを受けないポケボディー、サイゴバリアは非常に厄介。十分に注意してくれ」
「はい」
 奥村翔くんも強く頷くと、藤原くんの後を追って走って行った。
「さて、風見くん。君はこのままでいいのかな?」
 相変わらず虚空を見つめる彼。しかし彼に命を吹き込む一つの魔法がある。
「『市村アキラ』が全国で君を待ってるよ」
 こう耳打ちした刹那、彼の目は一気に命を取り戻す。
「本当ですか!?」
「彼にリベンジしたいなら、君はここでこんなことをしている暇はないはずだ。能力者なんて関係ない」
「……」
「君は君がすべきことを全うするんだよ」
「アキラ……」
 ようやっと立ち上がった風見くんを背に、僕は一足お先に対戦上へ向かうことにした。



「さてと、お前が話に聞いていた高津洋二か」
「……」
「おいおいおいなんか喋れよクソ野郎」
「お前に話すことはない」
「そぉか。お前はそうでも俺はそうじゃないんだよ」
 灰色のパーカーのフードを被って下を向いている高津は、顔が一切見えない。そして会話に関しても閉鎖的だ。元からそういう質(たち)なのか何も返してこない。
「せめてよぉ。人と人と会話するときは相手の目を見ろなんて学ばなかったのかよ? あぁ!?」
「言葉数が多いな……」
「俺様は喋って好感をもたれるタイプなんでな。そんなことよりお前の能力(ちから)、危なっかしいからとっとと潰させてもらうぜ」
「能力のこと、知っているのか」
 初めて高津の顔が俺を見つめた。とはいえ高津の顔は長い前髪でほとんど見えないのだが、その顔には衝撃的な物が一つあった。
「へぇ、火傷か」
 俺がそう言うと高津の眉が微かに動く。そう、高津は顔の右半分が火傷でただれていた。非常に醜い容貌を彼は必死に隠そうとしていたのだろう。
 ふーんなるほどね。能力というのは嫌なことに対する負の感情から生まれるまさに醜い力。あの火傷の跡から生まれたコンプレックスが高津に能力を与えたか。
「まあいい。俺様がお前をぶっつぶしてやる。さぁ、遊ぼうぜ!」
 先攻は俺からだ。互いにバトルベルトを広げ、バトルの準備を整える。俺のバトル場はヨマワル50/50。ベンチにはゴース50/50。一方高津のバトル場はワンリキー60/60一匹だけだ。
 ワンリキーの弱点は俺が扱う超タイプ。こいつはいい。超タイプを扱う俺にしては飛んで火にいる夏の虫ってところだ。
「へぇ、格闘タイプか。おいしいな」
「相性なんてものはまやかしだ。本当の力を見せてやる」
「力じゃなくて能力の間違いじゃないのかあぁ? 俺様のターン! まずは手札の超エネルギーをヨマワルにつけて攻撃! 影法師!」
 ヨマワルから伸びる影がワンリキーに襲いかかる。しかし与えたダメージは僅かに10。ワンリキー50/60もまだまだ余裕そうだ。
 このワザは相手にダメージカウンターを一つ乗せるワザ。相手に既にダメージカウンターが乗っている場合、更に追加でダメージカウンターをもう一つ乗せることが出来るが、生憎ワンリキーはダメージカウンターが乗っていなかったため10ダメージだけだ。
 そしてこれはワザのダメージを与えるものでなくダメージカウンターを乗せるという効果なので、弱点及び抵抗力の計算を受けない。
「威勢の割にはそれだけか。俺のターン、手札の闘エネルギーをワンリキーにつける。そしてサポーターを発動する。ハマナのリサーチ」
 ハマナのリサーチはデッキからたねポケモンまたは基本エネルギーを二枚まで選び手札に加えるサポーターカード。高津はパルキアGとマンキーを選択した。
「そして俺はパルキアG(100/100)をベンチに出して、手札からグッズカードの不思議なアメを使用」
 不思議なアメはご存じ、進化していないポケモンをそのポケモンから進化する一進化及び二進化ポケモンに進化させることのできるグッズカード。これが二進化ポケモンの弱点である遅さを軽減させる。
「ワンリキーをカイリキーに進化!」
「くっそ、まだ二ターン目なのに遠慮なしかよ」
 光の柱に包まれたワンリキーは全体的に大きくフォルムを変えていき、逞しい体つきへ変わっていく。そして光の柱からカイリキー120/130が現れた。
「同じエネルギー一つでもその違いを見せつけてやろう。落とす攻撃だ」
 カイリキーがチョップをヨマワルの頭部に喰らわせたその時だった。
「!?」
 理解不能の衝撃が頭上にズシンときた。思わず姿勢を崩して前のめりになる。
(大丈夫!?)
 俺のもう一つの人格である相棒が語りかけてくる。心配されるほど俺は軟(やわ)じゃねぇ。
「ああ、まだまだ。……なるほど、これがお前の能力か……」
 いってーな、と呟き頭をさする。口ではそう言ったがそんなもんじゃすまない。かなり硬いもので殴られたような感じがして立ち上がる時は少しふらついた。こいつは厄介だ。
「この落とす攻撃は、攻撃した相手が進化していない場合、ダメージを与える代わりに相手を気絶させるワザ」
「なんだと!? 俺のヨマワルが一撃かよ! くそっ、鬱陶しい!」
 ふらふらと倒れていくヨマワル。最大まであったHPはあの一撃で0/50となった。
「相性なんてまやかしだ。これが本当の力だ」
「ふぅん、そんな程度か。それくらいなら俺だって出来るぜ。俺はゴースをバトル場に出す」
「さっきから口ばかりだな。サイドを一枚引いてターンエンド」
 しかしまさかいきなりサイド先取されるとはね。
(やっぱり強いね……)
「けっ、これくらいやってもらわないとな。さあ、俺様のターン! ドロォー! まずはこうだ! 俺は手札の超エネルギーをゴースにつけ、ベンチにヤジロン(50/50)を出す。サポーター、シロナの導きを発動!」
 シロナの導きはデッキの上から七枚を確認し、そのうち一枚を手札に加えることの出来るサポーター。単純に引くだけとは違いきっちりサーチ出来るのがこのカードの強み。
(ここは手堅くアレで行こうよ)
「ああ、当然だ相棒よォ。このカードで決まりだ。さて、良いもん見せてもらったらしっかりお返ししねぇとな。こっちも不思議なアメだ。進化させるのはもちろんゴース。面白くなるのはここからだ! 来い、ゲンガー!」
 光の柱の中から光を消しさる程の深い闇を纏ったゲンガー110/110が現れる。
「もがいてみせろ! ゲンガー、シャドールーム!」
 ゲンガーは両腕を自分の腹部に持っていく。すると右手と左手の間に黒と見違えるほどの濃い紫色の立方体の謎の物体を作り出す。ゲンガーが腕を広げるとその立方体もそれに合わせて大きくなる。ある程度の大きさになると、ゲンガーはその立方体を投げつけた。
 謎の立方体はカイリキーの元へ飛んでいき、カイリキーにぶつかるや否や謎の立方体がカイリキーを包み込む。
 外からでは何も見えないが、この立方体の中でカイリキーには全身に異常なまでの圧力をかけれらてそれがダメージとなるのだ。
「このワザは相手一匹にダメージカウンターを三つ乗せるワザ。これも弱点と抵抗力は無視だ」
 ようやく解放されたカイリキー90/130、肩を上下させていたが程なく元通りに動き出す。
「その程度のダメージでは俺には効かない」
「へ、ほざいてろ顔面グロテスクが」
 ほとんど動かなかった高津の表情が今完全に憎悪のそれに切り替わった。
(さ、流石に煽りすぎじゃない!?)
「大丈夫だ」
「何を独り言を! 俺のターン」
 一瞬高津の行動が止まった。かと思うと、歪んだ笑顔で突如笑いだす。
「ははははは! 俺を愚弄したことを後悔させてやる!」
(何か仕掛けてくるよ!)
「けっ、口上はいい」
「俺は闘エネルギーをカイリキーにつけ、ベンチにマンキー(50/50)を出す。遊んでやる。カイリキーで攻撃、ハリケーンパンチ!」
 高津はワザの宣言と同時にコイントスを始める。
「このワザはコイントスをしてオモテの数かける30ダメージを与えるワザ。そのコイントスは……、オモテ、ウラ、ウラ、オモテ。60ダメージを食らえ!」
 ゲンガーに向かって走り始めたカイリキーは、右の二本の腕をぐんぐん回すとその二本の腕でゲンガーを思いっきり殴りつけた。ゲームならゴーストタイプに格闘ワザなど効かないが、これはカードなのだ。モロにパンチを受けたゲンガー50/110はその威力ゆえに吹き飛ばされ、衝撃を受けた俺も後ずさりをしてなんとか耐えた。
 左の肩甲骨の辺りと鳩尾のちょっと上に、これまた硬いもので殴りつけられたような衝撃、痛みが走る。
「くっ……」
「お前を少しずついたぶってやることにする」
「ふん、まだまだ! 俺のターン!」
 引いたカードはネンドール80/80。俺の方からサーチをかけようとしていたが自ずとやってきた。どうやら運は俺の方にあるらしい。
「俺はベンチのヤジロンをネンドールに進化させ、手札からグッズカードのゴージャスボールを使う。ゴージャスボールはデッキからLV.X以外の好きなポケモンをサーチするカードだ。俺は……。そうだなぁ、サマヨールを加える。更にネンドールのポケパワーを使うぜ。コスモパワー!」
 コスモパワーは手札を一枚か二枚デッキの底に戻し、その後手札が六枚になるまでドローするドローソースだ。今の手札は二枚。ヨノワールでない方の手札をデッキの底に戻し、五枚ドロー。
「けっ、超エネルギーをゲンガーにつけてヨマワル(50/50)をベンチに出すぜ。サポーター、オーキド博士の訪問を使う。デッキから三枚ドローした後手札を一枚デッキの底に戻す。ポケモンの道具、ベンチシールドをネンドールにつけるぜ。ベンチシールドをつけたポケモンがベンチにいる限り、ワザのダメージを受けない。さあ攻撃だ! ゲンガー、ポルターガイスト攻撃!」
 ゲンガーの影がすっと伸びてカイリキーの影と融合する。
「このワザは相手の手札を確認し、その中のトレーナーのカードの枚数かける30ダメージを与えるワザだ。さあ手札を見せな!」
 高津はバツの悪そうに眉をひそめると手札を見せる。ミズキの検索、闘エネルギー、プレミアボール、ネンドール。ミズキの検索とプレミアボールがトレーナーのカード。二枚だ。
「さあ、やれ!」
 カイリキー90/130の影から耳を壊しかねないような嫌な音が鳴り響く。カイリキーは四本の腕で耳を押さえようとするがそれも無駄。膝をつき、そしてついには倒れていく。
「さっきまではダメージカウンターを乗せるワザばっかだったが、今度は別だ。きっちりダメージを与えるワザだ。弱点計算はきっちりさせてもらうぜ!」
 30×2=60に、カイリキーの弱点は超+30。よって60+30=90。ジャストでカイリキーが戦闘不能になる。
「へっ、弱点がどーだこーだいっときながらこのザマかよ!」
「俺はパルキアGをバトル場に出す」
「サイドを引いてターンエンドだ!」
「……。俺のターンだ。手札からプレミアボールを発動。デッキからパルキアG LV.Xを手札に加える」
 プレミアボールはデッキまたはトラッシュのLV.Xを手札に加えることのできるカード。何か仕掛けてくるか。
「パルキアGをパルキアG LV.X(120/120)にレベルアップさせる」
 大きく咆哮するパルキアG LV.X。ついつい目が合ったが何だこの威圧感は。
「マンキーに闘エネルギーをつけて、サポーターカード発動する。ミズキの検索。俺は手札を一枚戻してヤジロン(50/50)を手札に加え、ベンチに出す。そしてターンエンドだ」
 もうターンエンドだと? まあいい。
「だったら俺のターン! アグノム(70/70)をベンチに出してタイムウォークを発動。このポケパワーはアグノムを手札からベンチに出した時に使え、サイドカードを確認し、その中のポケモンを一枚手札に加えることができる。加えた場合、俺は手札から一枚サイドにウラにして置く。俺はアンノーンG(50/50)を手札に加えて手札を一枚サイドに置く。そしてアンノーンGをベンチに出すぜ」
 これで俺のベンチは四匹。だがまだまだ増える。
「ベンチのヨマワルをサマヨール(80/80)に進化させて超エネルギーをつける。さらにサポーターカードのハマナのリサーチだ。超エネルギーとヨマワルを手札に加え、ヨマワル(50/50)をベンチに出す!」
 一気にベンチに大量展開したため俺のベンチがMAXの五体に。これで俺はこれ以上ベンチにポケモンを置けないが、それで十分だ。
「ネンドールのコスモパワーだ。手札を一枚戻してデッキから五枚ドロー! よし、攻撃する。ゲンガー、シャドールームだ!」
 高津の手札は一枚だけ。恐らくネンドールだろう。これではポルターガイストで攻撃する意味がない。
 ゲンガーから放たれる謎の物体はパルキアG LV.Xをとらえ、締め付けていく。
「シャドールームはポケパワーのあるポケモンにダメージを与える場合、ダメージカウンター三つに加えさらに三つ乗せることが出来る。パルキアG LV.Xにはポケパワーがあるみたいだな。それが仇となったぜ!」
 パルキアG LV.X60/120が苦しそうな悲鳴を上げたところでようやくシャドールームから解放された。
「おいおいおい、能力者ってこんなに大したことなかったか? 暇つぶしにもなんねぇぜ」
「その言葉が後に自分の首を絞めることになることを教えてやる」



拓哉(裏)「キーカードはこいつだな、カイリキー。
      なかなか鬱陶しい能力じゃねえか。
      特に落とすが強力だ。SPポケモンなんて瞬殺だぜ」

カイリキーLv.62 HP130 闘 (破空)
闘 おとす  40
 相手が進化していないなら、このワザのダメージを与える代わりに、相手をきぜつさせる。
無無 ハリケーンパンチ  30×
 コインを4回投げ、オモテ×30ダメージ。
闘闘無無 いかり  60+
 自分のダメージカウンター×10ダメージを追加。
弱点 超+30 抵抗力 − にげる 2


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