「あたしの番よ。手札の水エネルギーをタマザラシにつけて、ギンガ団のマーズを発動。デッキから二枚ドローしたのち、相手の手札を表を見ずに一枚選択し、それをデッキの底に戻す。一番右のカードを戻してもらうわ」
「くっ……」
ポケドロアー+がデッキの底に戻される。煩わしい……!
「タマザラシをトドクラーに進化させてターンエンドよ」
今、俺のバトル場には炎エネルギーを三枚つけたバクフーン110/110と、ベンチにはHPが風前の灯火となったマグマラシ10/80。そして姉さんのバトル場にはトドゼルガ70/130と、ベンチにはデリバード60/70、水エネが二枚ついているユキメノコ80/80と水エネルギーを一枚つけたトドクラー80/80。
ポケモン的には俺の方が不利だが、流れは今俺に来ている。まだワンチャンスはあるはずだ。
「俺のターン。手札の炎エネルギーをマグマラシにつけてバクフーンで攻撃。気化熱!」
炎と蒸気のエフェクトを受け、大きく後ずさったトドゼルガのHPバーが0に近づく。60ダメージを受けて残りはわずか10/130。トドゼルガはエネルギーが足りないのでワザを使えず、逃げることも出来ない。次の番には倒せるはずだ。
「あたしの番ね。トドクラーに水エネルギーをつけて、……そうね。終わりよ」
姉さんの手札は未だ一枚のまま。その調子が続く限り、姉さんも大きな動きは出来ないはず。姉さんが動けないうちに一気に押してやる。
「俺のターン。もういっちょバクフーンで攻撃、気化熱だ!」
トドゼルガ0/130の悶絶する声と共にズシンとその巨体が倒れ、気絶する。サイドカードを一枚引くと、姉さんはユキメノコをバトル場に出す。
やっと初めて引けたサイドだ。このまま俺のペースをキープしたい。
しかも今引いたカードはヒトカゲ。たねポケモンを新たに加えられたことで、次の俺の番再びまた新たなポケモンを育てられる。
今バトル場にいるバクフーンが倒されると、ベンチにいるのはマグマラシ10/80のみ。でもこれで不安が残るベンチに安寧の風が流れるだろう。
「あたしの番よ。トドクラーをトドゼルガに進化させるわ」
「進化? ということはまさか……」
「そのまさかよ! この瞬間にトドゼルガのポケパワー発動。氷結!」
進化したときのみ使え、二回連続コイントスをオモテにすれば、相手のバトルポケモンをトラッシュさせる強力なポケパワー。確率は四分の一だし、さっきもそれでリザードンが倒されてしまっている。だから今度こそ無いと信じたいところだが。
「よそ見してていいの?」
はっ、と気付いた時には時すでに遅し。バクフーンが目の前で氷漬けになっていた。氷結が成功していたのだ。
「今日はなんか運がいいわね」
「ちょっ、えー!?」
バクフーンはトラッシュされ、今や残るは瀕死のマグマラシ10/80のみ。そして止めの一撃が襲いかかる。
「ユキメノコでマグマラシに攻撃。霜柱!」
再び鋭い音と共に巨大な霜柱がフィールドにいくつも現れ、マグマラシ0/80を下から突き刺すように襲う。
「ぬおおっ!」
「マグマラシが倒れたからサイドを一枚引くわ。でも、今マグマラシが倒れて、翔の場にポケモンがいなくなったからあたしの勝ちね」
「え。あー、しまった!」
時既に遅し。気付いた時には既に決着が着いており、場のポケモンの映像が全て消滅していた。
敗因はほとんどコイントスによるものだ。運で負けるというのはどうもやりきれない悔しさが勝って気が晴れない。
さて、ギャラリーの子供たちは姉さんの元に集まっていく。すごいねー、だの強いねー、だのかんだのと、そういう称えるような声が聞こえた。
やや不貞腐れながらバトルベルトを直していると、突如野次馬の子供のうちの一人が俺の顔の傍にやってきてボソッと呟く。
「全然ダメじゃん」
その声を聞いて、俺は寒空の中膝から崩れ落ちた。
「ほらほら、翔。そんなに落ち込まないの。そうだ、今日は外食に行こうか!」
「どーせ弁当屋だろ。落ち込んでないし」
「どーせ、って失礼ね。なんなら翔だけ晩御飯無しでもいいんだけど」
「いや、あの。ごめん」
「分かればよろしい。さ、行くよ」
ああ、なるほど。これで二連敗ってことか。確かにダメかもなー俺。
口から漏れた白い息に顔を隠し、ひっそりと姉さんの後に着いて行った。
雫「今回のキーカードはユキメノコね。
進化したとき、好きなカードを一枚サーチ!
霜柱もエネルギー二個で50ダメージよ」
ユキメノコLv.45 HP80 水 (DPt4)
ポケパワー ゆきのてみやげ
自分の番に、このカードを手札から出してポケモンを進化させたとき、1回使える。自分の山札の好きなカードを1枚、手札に加える。その後、山札を切る。
水無 しもばしら 50
場に「スタジアム」があるなら、このワザは失敗。
弱点 鋼+20 抵抗力 ─ にげる 3