マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.818] 60話 下準備 投稿者:照風めめ   《URL》   投稿日:2011/12/14(Wed) 10:40:47   39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 最初の四試合が終わり、拓哉は無事に二回戦へ駒を進めた。その一方で蜂谷は敗北から来た喪失感なのか、「心ここに在らず」状態でどこを見てるのかイマイチ分からない状況だ。
 そしてこの最初の四試合のうち一つに、能力者の一人である高津洋二の試合があった。そう、あったはずなのだがなぜか全然目に止まらなかった。
 試合が終わってからそういえば高津の試合があったなと思い出す程度で、びっくりするくらい存在感のない試合だった。
 そして担架でその対戦相手が運ばれてたのに、ほとんどの人が知らんぷりというよりは気づいていない感じだった。
 真っ白な服を着た男性が数人で担架を運んでいればどう考えても目立つのは必至なのに、周りはそれに気付かない。
 この不思議な光景に一抹の不安を感じた俺は、風見と共に首をかしげるしかなかった。
 そして次の四試合。向井が三十近く見えるおっさんと戦って圧勝。相手の引きが悪くて、たねポケモンが二匹しか揃わなかったところを向井は遠慮なく叩きのめした。
 一回戦は残り八試合。今から行われる四試合には、恭介と風見が。そしてその後は俺と石川と松野さんと、もう一人の能力者である山本信幸が戦う。
 恭介の選手番号は17で、風見の選手番号は21。二人がぶつかるのは三回戦だ。そしてその恭介らの試合が今から始まろうとしている。



「恭介ー! 俺の仇をとってくれー!」
「えー」
「おいこら『えー』ってなんだよ!」
 蜂谷が外野からぎゃーぎゃー騒いでいると、翔がコツンと蜂谷の頭を叩いた。
「蜂谷、お静かに。周りから変な目で見られると一緒にいる俺らが恥ずかしいじゃん」
「……はい」
 とりあえず蜂谷は翔に任せれば大丈夫そうだ。気分を入れ替えるために両頬をピシャと叩いて、これから始まる試合に集中しようと図る。
 バトルベルトをマニュアル通りに起動させる。今まで遠目で見てたが、目の前で使ってみるとなんだか楽しい。時代の最先端にいる気がする。
「うおおお、すげえ楽しい!」
 とはしゃいだはいいものの、今から決勝リーグ一回戦だと考えると緊張する。部活のバスケの試合前とかと同じような緊張感があって、ポケモンカードは遊びだが、その遊びにいろいろ懸けている人がいるんだなあと認識させられる。
 負けたくないな。勝ちたい。別に勝って優越感に浸りたいとかそんなんじゃなくて、純粋に勝ちたいなと思う。
「よろしくお願いします」
「こちらこそお願いします」
 俺の対戦相手は八雲 真耶(やくも まや)と言う名前らしく、綺麗な艶のある黒色の痛みの少ない肩甲骨辺りまでのロングヘアー。カールした毛先が可愛らしい。
 身体は細いが若干引き締まっていて、ウェストにくびれがある。首に黒のチョーカーを付けていて、色の濃い長袖のシャツと、タイトなジーンズを履いている。男装が似合いそうな印象がある。あと、年齢はタメだ。ピシッとしている印象があって年上に見えた。
 デッキをデッキポケットに入れ、オートシャッフルのボタンを押す。バトルテーブルがデッキを認識して、人がするシャッフルの何十倍もの速さでデッキがシャッフルされ、手札とサイドが分配される。
「う」
 最初の俺の手札は雷エネルギー、雷エネルギー、ピチュー、ライチュウ、ナギサシティジム、ハマナのリサーチ、ゴージャスボール。最初のたねポケモンがピチューのみのため、下手をすれば相手に一撃でやられてしまう恐れがあるため決していい手札とは言い難い。
 やむなくピチューをバトル場にセットする。相手のセッティングも終わったらしく、同時に最初のポケモンを開示する。
 俺のバトル場はピチュー50/50で、八雲のバトル場はサイホーン60/60、ベンチにはヒポポタス70/70。
「最悪だ……」
 右手でパシンと額を叩く。ここまで来ると言葉にせざるを得ない。雷タイプの最大の弱点となる闘タイプのポケモンがまとめてやってきた。こっちの弱点でもあるし、相手にとっては抵抗力があるためダメージが綺麗に通らない。
「恭介、まだ諦めんなよ! 始まってさえないんだから!」
「そうだ! 翔の言う通りだ! ……セリフ取られて大して言う事がない」
 翔と蜂谷が後ろの方からエールを送ってくれる。根拠はないが、なんだか安心できる気がする。
 運が悪いと嘆いている俺だが、実は相手の手札はこのとき五枚とも全て闘エネルギーという俺よりもっと悲惨な典型的な逆エネ事故を起こしていた。もちろん、俺は知る余地がなかったのだが。
「先攻は俺がもらうぜ! ドロー」
 今引いたのはピチュー。ハマナのリサーチやゴージャスボールを使ってなんとかやられる前に立てようと思うが、先攻一ターン目はトレーナーカードを一切使えない。
「雷エネルギーをバトル場のピチューにつけ、俺は新たにベンチにピチューを出すぜ。そしてピチューのワザ。おさんぽ! このワザは自分のデッキのカードを上から五枚見て、その中のカードを一枚手札に加える。そして残りのカードをデッキに戻してシャッフルする技だ!」
 バトルベルトがオートでデッキの上から五枚のカードのディスプレイを表示する。エレキブルFB LV.X、ピカチュウ、雷エネルギー、バクのトレーニング、ベンチシールドの五枚だ。今一番必要なカードは……。ピカチュウだ。ピカチュウを手札に加えてシャッフルボタンを押すと、再びバトルベルトが高速でシャッフルを行う。
「私のターンです。ドロー。……手札の闘エネルギーをサイホーンにつけて攻撃します。角で突く!」
 サイホーンがドスンドスンと大きな足音を立てながらピチューに突っ込み、そしてそのまま額の角でピチューを突き飛ばした。本来角で突くのワザの威力は10だが、ピチューは弱点として闘ポケモンからワザを食らうと更に10食らう。ピチューのHPは30/50となった。
「よし、俺のターンだ。まずはゴージャスボール。自分のデッキから好きなポケモンを一枚手札に加える。俺が手札に加えるのはライチュウ。そして更にサポーター、ハマナのリサーチを発動。俺はヤジロンとピカチュウを手札に加える。そしてヤジロンをベンチに出すぜ」
 ベンチのピチューの隣にヤジロン50/50が現れる。
「そしてバトル場のピチューのポケパワー発動。ベイビィ進化! 自分の番に一度使え、自分の手札のピカチュウをピチューに重ねて進化させる。そのときピチューの受けているダメージは全て回復だ!」
 ピチューのHPゲージがMAXまで回復すると、その体が白く包まれてピカチュウ60/60へと進化する。
「ベンチのピチューも同様にベイビィ進化だ! 更にバトル場のピカチュウに雷エネルギーをつけて、手札からスタジアムカードを発動。ナギサシティジム!」
 スタジアムカードを所定の位置にセットすると、丁度俺達二人を中心に周りの景観が変わって行く。回転する歯車やスイッチなどが辺りに大量に現れ、ゲームを想わせる環境になった。
「このナギサシティジムが発動している間、互いの雷タイプの弱点はなくなり、雷ポケモン全員のワザは相手の抵抗力を無視してダメージを与えることができるようになる。なんとかこれでバトルはイーブンに持ちこめるぜ」
 雷タイプの最大の弱点をこれで補うことができる。俺のデッキに入ってるポケモンのほとんどが闘タイプが弱点であり、その逆の闘タイプは雷タイプに抵抗力を持っていることが多い。現にサイホーンとかがそうだ。
「ピカチュウで攻撃。ビカビカ!」
 ワザの宣言と同時にコイントスをする。このワザはコイントスが表の場合、与えるダメージを10追加することができるワザだ。
「ラッキー! コイントスは表! よって20に10足してサイホーンに30ダメージ!」
 ピカチュウの頬から放たれる電撃がサイホーンに襲いかかる。それだけでなく、なんとジムのギミックからもサイホーンに向けて放電されていた。何はともあれ、サイホーンのHPは30/60。もし次のターン進化できず、またビカビカが成功すれば倒せる。
「ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー。サイホーンに闘エネルギーをつけ、サイドンに進化させます」
 サイドン60/90がドスドスと響くような足踏みをして現れる。一通り足音を鳴らし終えると、こちらを睨んできた。その目が妙にリアルに感じられて気圧される。
「サイドンで攻撃。突き壊す!」
 サイドンが牛のように左足で数回地面をならすと、頭のドリルを前にして突っ込んできた。ピカチュウがトラックに撥ねられたように、というよりはコミカルに吹っ飛んだが、サイドンはピカチュウなんて最初からいなかったと想わせるようまだまだ突進していく。そしてベンチのピカチュウとヤジロンの間をすり抜け、俺の隣もすり抜け、俺の背後にあるナギサシティジムの壁に激突する。するとジグソーパズルが崩れるような感じでナギサシティジムの景観は失われ、元の会場に戻って行く。
「突き壊すは場にスタジアムがある場合20ダメージを追加し、そのスタジアムをトラッシュさせます」
 突き壊すの威力は30。それに20追加されると50ダメージ。ピカチュウのHPはあっという間に10/60となった。しかしサイドンが隣を通った時は冷や汗が浮かんだ。
「幸いなのはワザのダメージを計算してからスタジアムがトラッシュされたことだな……。もし処理順がスタジアムのトラッシュを優先されてたら弱点も計算してピカチュウは気絶していたぜ」
 俺がそうつぶやくと、対戦相手の八雲もまったくだと言わんばかりに頷いてきた。
「俺のターン! よし。手札のポケドロアー+を二枚発動。このグッズは二枚同時に発動したとき、自分のデッキから好きなカードを二枚手札に加える効果を持つ!」
 ナギサシティジムを手札に加えようとした。しかし、それを選択する前に一つの考えが頭をよぎる。
 もしこのターン、再びジムを発動させても次のターンまたまたサイドンにトラッシュされてしまうのではないか。もしドサイドンに進化できる環境であっても、再び突き壊すをしてくるという可能性は否めない。
 だからといってジムを手札に加えないと、俺のポケモンがやられてしまう。どちらも阻止するにはどうすればいいか。
「これだ!」
 適当に山札から引くこと! 全ては後から考える。引いたカードはワープポイント。……良いこと思いついたぜ。もう一枚は順当にネンドールを選ぶ。
「ヤジロンをネンドール80/80に。ベンチのピカチュウをライチュウ90/90に進化させるぜ。そしてネンドールのポケパワー発動。コスモパワー。手札を一枚か二枚デッキの底に戻して手札が六枚になるようにドローする!」
 俺は手札のライチュウをデッキの底に戻す。これで手札はワープポイントのみとなり、新たに五枚ドローする。
「エレキブルFB[フロンティアブレーン]をベンチに出す」
 これで俺のベンチにはライチュウとネンドールとエレキブルFBが並ぶことになる。
「そして雷エネルギーをこのエレキブルFBにつけ、グッズ発動。ワープポイント!」
 バトル場のピカチュウとサイドンの足元に青い渦が現れて両者を飲み込む。
「ワープポイントによって互いにバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替える! 俺はエレキブルFBをバトル場に」
「私はヒポポタスを……」
 八雲の顔が陰る。これが俺の即興タクティクス。ヒポポタスを引きずり出すことに一見意味はなさそうだが、ヒポポタスは逃げるエネルギーが二つ必要なうえに使えるワザもまだ大したことない。
「そしてエレキブルFBのワザを使うぜ。トラッシュドロー。自分の手札のエネルギーを二枚までトラッシュし、トラッシュした枚数×2枚ドローする。俺は手札の雷エネルギーを二枚捨てて四枚ドロー。ターンエンド」
「私のターン。手札の闘エネルギーをヒポポタスにつけ、スタジアム発動します。ハードマウンテン!」
 今度は周囲が険しい山に変わる。丁度山の高いところにいるようで、俺達より低い(ように見える)ところに雲がかかっている。
「ハードマウンテンの効果は、互いのプレイヤーは自分の番に一度自分のポケモンの炎または闘エネルギーを一個選んで別の炎または闘ポケモンにつけかえることが出来ます。これでサイドンの闘エネルギーをヒポポタスに一つつけかえます」
「これでヒポポタスのエネルギーは二つ!?」
「そしてサポーター、ミズキの検索を発動。手札を一枚デッキに戻し、LV.X以外のポケモンを手札に加えます。私が加えるのはドサイドン」
 ヒポポタスを逃がさないでくれ……! と祈っていたが、よく考えるとそれをする利率は低そうだ。
 サイドンの今の闘エネルギーは一つ。そしてサイドンのワザエネルギーは闘無の突き壊すと闘闘無の激突。既にこのターン、ヒポポタスにエネルギーをつけかえているのでサイドンは攻撃できないことになる。
「ヒポポタスで攻撃、突き飛ばす!」
 ヒポポタスが体で思い切りタックルをすると、エレキブルFBはベンチエリアまで吹っ飛んだ。弱点が闘×2のエレキブルFBは10×2の20ダメージを受けて70/90に。
「突き飛ばすの効果で、相手はバトルポケモンとベンチポケモンを強制的に入れ替えなくてはなりません」
「俺はピカチュウをバトル場に出す」
「ターンエンド」
「俺のターン、ドロー。ピカチュウの雷エネルギーをトラッシュしてベンチに逃がし、エレキブルFBをまたバトル場に出すぜ。そして手札の雷エネルギーをベンチのライチュウにつけて、サポーター発動。ハマナのリサーチ。その効果によってデッキからピチューとピカチュウを手札に加る。そしてベンチにピチューを出してピチューのポケパワー、ベイビィ進化によってピカチュウに進化させるぜ!」
 これで俺のベンチに二匹目のピカチュウが並ぶ。
「エレキブルFBをレベルアップさせるぜ!」
 エレキブルFB LV.Xの咆哮が響く。HPも100/120と大台に乗り、ポケパワーも強力になる。
「さあ、こっからが本番だ!」



恭介「こいつが今日のキーカード!
   ポケパワーを使うとターンは終わるけど、
   エネルギーをトラッシュするワザの多い雷タイプとの相性はいいぜ!」

エレキブルFB LV.X HP120 雷 (DPt3)
ポケパワー エネリサイクル
 自分の番に、1回使えて、使ったら、自分の番は終わる。自分のトラッシュのエネルギーを3枚まで選び、自分のポケモンに好きなようにつける。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。
雷無無  パワフルスパーク 30+
 自分の場のエネルギーの合計×10ダメージを追加。
─このカードは、バトル場のエレキブルFBに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 闘×2 抵抗力 鋼−20 にげる 3


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー