マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.294] 10話 生じる予感 投稿者:照風めめ   投稿日:2011/04/19(Tue) 00:13:05   74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 冬の空気は凍てつき寒く、息を吐けば白くなる。手袋やセーターの着用が目立ち、そして迫りくる来年へと世間はせわしくなっていた。
 うちの高校は期末考査が終わり、言わずとも残念だった人や普段の勉学の成果が出た人など大きく分かれた。
 恭介はかなり底の方の成績だったが、俺が指導することによってなんとか平均点に近づいてきた。
 文理分けもそろそろ始まり、俺も恭介も共に理系に進むことに決めた。ただ、変わったことはそれだけではなかった。
 この間の対戦の後、風見が再び学校に来始めた。そして少しずつではあるが俺たちと打ち解けて来るようになったのだった。
 性格も喋っていると意外とフランクなことも分かった。周囲は今までずっと独りだった風見が俺らのグループに入ってきたという大ニュースに驚きを隠せないでいた。
 試験も終わり、再びカードゲームで遊び始めた俺ら。あと一週間とちょっとで冬休みだが、それが近づくごとに様子がおかしくなる奴がいた。
 彼の名前は藤原拓哉。ほとんどのやつは拓哉とか藤原とか普通に名前を呼ぶだけである、やや地味な男友達。ただ、男の割には銀色の綺麗な髪を腰ほどまで伸ばしていたり、その柔和な笑顔から女の子に間違われることも多い。
 性格は非常に引っこみ思案で、揉め事などが苦手で一歩後ろを歩いてくるような感じである。カードをあまり持ってなく、四色混合デッキとかなり暴挙に出ていたりする。俺もカードを譲ってあげたことが何度かある。余談だがムウマが好きなそうだ。
 で、その拓哉の調子が変なのだ。どう変かと言うと、やけに何かを気にするようそわそわしている。俺達がいくら訪ねても「何もないよ」と誤魔化しているのだが。
 よそ様のことであるのであまり深追いしないようにしているのだがどうしても気になる。
 だが、他人の心配をしていられる暇はなかった。


 珍しく風見と二人っきりで喋りながら帰っていた時のことだった。本来風見と俺は全然違う方向なのだが、用があるとのことで共に歩いている始末である。うちのボロアパートのそばまで来たとき、大きな体格でいかつい顔をした男が一人。そしてその後ろにやや細めのひょろい男が一人いた。
 こちらを見るや否や近づいて来る。え、そんな変なことしたっけ。俺の目の前まで来ると大柄ないかつい男の方が声をかけてきた。
「君、奥村昌樹さんの息子さん?」
 奥村昌樹とは俺の父の名前である。俺の両親は三年前、飛行機の墜落事故で命を落とした。現在は社会人である姉に養ってもらい、なんとか二人で暮らしているのである。死んだ父に用があるのだろうか。
「はい、そうですけど」
「昌樹さんは今いるかな?」
 見た目のいかつさとは違って割とジェントルマン。もしかして昔の知り合いとかか?
「いえ、三年前に飛行機事故で……」
 俺が表情を曇らせると、相手もそうか、と一つ呟く。
「そうかそうか、すまないな」
 男は遠くを見るような眼で俺を見る。
「あまり子供に対して言うのは気が進まないが」
 そう言うと、男は持っていた鞄から一枚の紙を取り出した。そこには「借用書」と大きく書かれている。
「君の伯父さんが、一年前に借金をしたままなんだ。ところが夜逃げされてねぇ。悪いけど、保証人のお父さんの御子息である君に払ってもらいたいんだ」
 冬なのに冷たい汗が背中を流れた。思わず頬をつねるが、手渡された借用書には変わらず五百万とかかれていた。
「俺は未成年の、こっち系でないヤツにこんなことをするのは嫌いだが、こちとら仕事なんでね。悪いけど頼むよ」
 男が俺の肩をやさしく叩く。細い男は大柄な男の後を追うように去って行った。
 取り残された俺は渡された借用書を持ったまましばらく動けない。どうしてこうなるんだ。膝ががくがく震え始めた。
「翔」
 後ろにいた風見の手が俺の左肩に置かれる。
「聞け、翔。運が良いのか悪いのか、タイミングだけは非常にいい。TECK主催のポケモンカードゲーム大会の風見杯。これが一月に行われるのだが、この大会で優勝すればちょうど五百万の賞金が出ることになっている」
 黙ったままの俺に風見は話を続ける。
「この大会はこの間俺とお前で使った3D投影機のプロモーションも兼ねていて、それなりに提供も多い。人数を集めるためにさっきも言ったが優勝者には賞金を出している。翔、お前は風見杯に出ろ」
「……」
 もう何が何やらわからず頭がパニックを起こしている。もはや今持っている紙が何を示しているのか、風見が何を言っているのかもう分からない。
「……とりあえず詳しいことが決まり次第教えるからな」
 風見は一切動かない俺を見つめていたが、やがて踵を返して立ち去って行った。



翔「今回のキーカードはムウマ!
  相手がねむりならばこいつは一気にキラーカードになるぜ!」

ムウマLv.19 HP60 超 (破空)
─ こもりうた
 相手をねむりにする。
超 あくむのうたげ
 相手がねむりなら、相手に50ダメージを与え、自分のダメージカウンターを5個とる。相手がねむりでないなら、このワザは失敗。
弱点 悪+10 抵抗力 無−20 にげる 1


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