マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.974] 96話 偶然の再会S 投稿者:照風めめ   《URL》   投稿日:2012/05/03(Thu) 19:57:47   25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「待たせたな」
「ん? 俺もさっき来たばかりだし」
「そうか。じゃあ早速行こうか」
 五月十五日は日曜日、俺と風見の二人で出かけることになった。余談だがさっき来たばかりとは言ったが俺は十五分前から待っていた。まあ風見は時間ぴったしに来たから別に責めはしないが。
 そもそもこいつと俺が一緒に出かけるのは、うちの引っ越しが終わって二日後の放課後のことだった。
 引っ越しを無理やり付き合わせたのだから今度は俺の用に着いてこい、という至極単純明快なものだ。
 その用と言うのも今日開かれる次世代型光学機器? とやらの講演を聞きに行くものらしい。
 俺としてはまるで興味がないが、まあ前述したとおり引っ越しに無理やり付き合わせたのだからこれくらいは仕方がない。寝ればいいし。あ、あと文化委員に無理やりさせたことも怨んでたな。
 駅から八分程歩いて大きめの区民会館につく。なんだかやけに仰々しい。入口の立て看板に従って進んでいく風見の後を俺はただただ追うしかない。
「なあ、ちょっと」
「どうした」
「俺たちより明らか年上の人ばっかりじゃない? スーツ来てる人までいるし」
「そいつらはそいつら、俺たちは俺たちだ」
「いや、まあそうだけど」
 俺は完全に場違いだ。もっと気楽なもんだと思っていたが、もしかしてこれ普通に技術者とかが来るやつじゃないのか。うーん、まあ確かに風見は技術者かもしれないが。
 ホールに着く。席は自由らしいので出来れば端っこでひっそりと過ごしていたかったのだが風見にかなり前の方まで連れて来られた。
「ほぁ〜、眠いな」
「寝不足か?」
「まあそんな感じ。昨日の深夜中継のサッカー見てたからあんまし寝てなくて」
 もう一発あくびが出る。視界が若干滲んだのはあくびで涙が出たからだろう。両手で両目を軽くこするとやっぱりその通り。
「これいつ開演?」
「二時からだからあと十二分くらいあるな」
「あとさ、どれくらいかかるのこれ」
「講演のことか? 二、三時間くらいだろうきっと」
「え、そんなにあるの」
「お前の引っ越しに付き合った時なんて一日持っていかれたぞ」
「あ、まあうん」
 引っ越しは体動かせるから暇じゃないじゃん。とは流石に言えなかった。風見が本気で怒ったところを見たことはないが、まあ本気までいかなくてもそれなりには怒るだろうし。
 そこからボーッとしていると、突如アナウンスと同時に拍手が巻き起こる。壇の端からはやや薄い白髪が気になる老齢の男が現れた。その中でも紺のスーツの胸元にある赤いリボン徽章が一際目立つ。
 机の上のマイクを手にとってから男は喋りはじめる。
「えー、この度は……」
 前の方にいたからかろうじて聞き取れたものの、マイクは電池が入っていないようで、男がこんこん鳴らしたり振ったりしてもそりゃあ出ないものは出ないだろう。
 男が現れた方とは反対側から、やや駆け足気味で助手と思わしき別のスーツを着たオレンジ色の短髪の男が新しいマイクを渡しに来……。
「あ!」
 思わず大声を出して立ちあがってしまった。それと同時にこのホールの時も止まったかのように固まる。
 もちろんのこと周囲の目が俺に集中した。俺に目線をやったのは風見や、周りの客だけではなく壇上にいた老齢の男と、その助手と思わしき男、冴木才知も。
「座れ!」
 小声で怒鳴って風見がジーパンを下に引っ張る。あ、ああ。と情けない声を出して着席すると、時が動き出したかのように才知は男にマイクを渡し、そそくさと壇から消えていった。
「不手際やハプニングがございましたことをお詫びいたします。さて、この度はこの講演会にいらしていただき誠にありがとうございます。今回は、次世代光学機器のあり方や、将来についてをわたくしが話させていただきます」
 さっきのあれは間違いなく才知だ。ここ一年程ほとんど連絡のとれなかった才知。
 あいつは俺たちと同い年のはずだ。なんで壇上にいたのかさーっぱりわからん。いや、壇じゃなくても俺の歳でこの席に座ってることも十分不自然なんだけども……。
 さて壇上では相変わらず老齢の男がなんだかんだ言ってるが、聞いたところで分からないので瞼を伏せる。リズム良く喋ってくれているので聞き心地がいい。
 そういえばこの老齢の男の名前なんだったかな……。



 次に目を覚ましたとき、辺りは割れるような拍手喝さいによって包まれていた。その中でたった一人腕を前にのばして伸びをする。
 どうやら講演会も終わったらしく、あの男ももう壇上から消えて行った。周りの人たちも席を立ち始めているようだ。
「あー、よく寝た」
「……はぁ。何があったか知らないが、急に立ち上がったかと思えばその過ぎ後に寝るとはな」
 急に立ち上がった時?
「あ! あー! それだよそれ! 思い出した」
「だからなんだ。分かるように話せ」
「最初のさ、マイクが電源入って無かった時に新しいマイクを渡しにきた人いたじゃん、あいつ絶対俺の中学時代の友達」
 風見は鼻でふんと笑うと椅子から腰を上げる。
「中学時代の友達が壇上にいるだと? 俺たちと同級生ってことは高校生二年生くらいだろう。そんなやつがなぜ壇上にいたんだ」
「いや、その」
「見間違いだろうどうせ。そんなことよりとりあえず帰るぞ。帰りはどこかで飯でも食べるか?」
「……いいけど」
 風見は俺の話を一向に信じてくれない。たぶん、風見が早口なのは俺が変に大声を出して目立ったことについて少しだけ怒っているからだろう。
 とはいえ風見をなだめる方法なんて何かあったか? うーん、恭介とかなら適当に飯食わしたら黙るんだけどなあ。
「お、おい、ちょい待てって」
 先に進んでる風見を追いかけ慌ててホールを飛び出した。と、同時に。
「おっと!」
「うわっ!」
 走っている俺は、途端に横から現れた人とぶつかりそうになる。
「ごめんなさい、大丈夫ですか? って、あれ」
 思わず頭を下げて謝る。そして顔を上げれば……。
「……才知、だよな」
「やっぱり翔だ!」
 今ぶつかりそうになったのは、さっき壇上でマイクを渡してきた男。目の前で見て確信した、やっぱり冴木才知だ。
「おい、どうした」
 風見が俺たちの大声を聞きつけて何事かと戻ってくる。
「お、紹介するよ。俺の高校の友達の風見雄大。で、こっちは俺の中学時代の友達の、冴木才知」
「よろしくね」
「えっ、あ、ああ」
 何が何だか分からない戸惑いを見せつつも、才知が出した右手に応えるよう握手をし返す。どうだ、見間違いなもんか。
「風見くんの話はよく知ってるよ、バトルベルトの開発者」
「ああ、ありがとう」
「へぇ。才知は風見のこと知ってたのか」
 才知は首を縦に振る。やはりバトルベルトの開発者となると有名になるのは当然か。そういえば気になっていたことが。
「どうして壇上にいたんだ?」
「え? だって今回は伯父さんの講演会だから手伝いに来たんだ」
「伯父さんだったのアレ!」
 あの老齢の男、明らかに見た目は六十歳行ってる気がするんだけど本当に伯父なの?
「そうだ。折角だし一緒にご飯食べに行こうぜ」



 スーツから私服に着替えた才知と俺と風見で会館からすぐそこのファミレスにやって来た。
 本当はまだ五時半くらいで食事には早いのだが、この後も才知は用が詰まっているらしいのでまあそこは仕方ない。
 聞く話によると、才知はさっき演説してた伯父さんの研究室で光学機器の研究の助手をしているらしい。
 風見と同じく学業との二足草鞋だが、風見以上に研究に時間を割かれていて研究室用の携帯電話を持たされていてそっちばかりを触っていたから俺のメールになかなか気付かなかったらしい。もはやその携帯はないのと同じじゃないのだろうか。
 それを取り繕うように聞かされたが、自分の携帯を見るのは一週間か二週間ごとに一度程度のようで、こないだの由香里が来たという話ももちろん後になってから知ったとのこと。せめて後からでいいから返信くらいしてくれれば良いものを。
「へー、忙しいんだね」
「でも僕としては充実しててすごい楽しいから満足してるんだよ」
 元から才知は何でもこなす天賦の才があったから、将来は研究者にでもなってるかもしれない。そう思っていたことも多々ある。が、まさかもうなっているとは完全に思いの外だ。風見もそうだがお前ら早い。早すぎる。
「正確にはいろいろと違うところはあるんだけど、バトルベルトも一応光学機器だし僕と風見くんはきっとそれなりに通じるとこがあるかもしれないね」
 そう言って向かいにいる才知はスパゲッティを口に押し込む。一方左隣りにいる風見はどうかしたのか細かく切ったハンバーグをフォークに突き刺したまま固まっている。
「……その手もありか」
「うん? 風見さっきからどうした」
「あ、ああ。それより冴木、君の仕事用の携帯のアドレスを教えてくれないか」
「もちろん」
 風見は刺しっぱなしのハンバーグを口にいれると携帯を取り出す。応じた才知も携帯を出して赤外線通信でやり取りをする。
 本当は俺もよく連絡が取れるならと思ってそっちのアドレスを聞こうと思ってたのだが、邪魔をしちゃ悪いなと思って言えない。風見も才知も自分のやるべきことをしっかりと見つけてやっているんだ。その邪魔は出来ないよなあ。
「おっとそろそろ戻らなきゃいけないからごめんね、お金は置いとくよ」
 腕時計を確認してから冴木はポケットから千円札を取り出して机に叩きつけ、席を立つ。
「若干多くてもおつりはいいから!」
「お、おお! じゃあまたな!」
「後で早速連絡させてもらうぞ」
「それと翔、あのときの約束はまだ続いてる。今年こそ、三人で全国大会で会おう!」
 そう言うと才知は駆け足で去っていった。約束。由香里が大阪に戻るとき、ポケモンカードの全国大会でまた三人で集まろうという約束だ。もしかしたら才知は由香里が東京に来てた時、約束が叶う前に三人が揃うのを拒んで来なかったのかもしれない。……いや、いくらなんでも考えすぎかな。
 手を振りながら才知の背中を追っていたが、すぐに壁の向こうとなり見えなくなる。
 四人席に座っていたのだが、向かい側にいた才知がいなくなって俺と風見が隣同士。これじゃあ不格好なので食器を動かし風見の向かい側に座る。
「そういや才知に連絡って、何かあるの?」
「まあバトルベルトの事でいろいろ参考程度にな」
「ふーん」
 深く聞いたところでどうせ素人の俺にはわからないだろう。この辺でこの話は切り上げるとするか。
「今さらだが」
 風見が話を切りだした。しかし話しかける割には目線は俺にではなく才知が置いて行った千円札に。
「冴木の分、千円じゃ多少足りないよな」
「……確かに」



風見「今回のキーカードというより次回のキーカードだな。
   大型の二進化ポケモンカイリューだ。
   コイントスの結果次第ではドラゴンスタンプは強大なワザとなる」
   
カイリュー HP140 無 (LL)
無無無 やすらぎウインド  50
 このポケモンの特殊状態をすべて回復する。
無無無無 ドラゴンスタンプ  80
 コインを2回投げ、すべてオモテなら、相手のバトルポケモンをマヒにする。すべてウラなら、このワザは失敗。
弱点 無×2 抵抗力 闘−20 にげる 4

───
ポケモンカードスーパーレクチャー第十二回「計算順序」
http://www.geocities.jp/derideri1215/library/lecture/96.html


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