マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.295] 11話 希望を掴め 投稿者:照風めめ   投稿日:2011/04/19(Tue) 00:13:40   66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「……」
 部屋に入るとかばんを投げ捨て、床の上に大の字で寝転がる。
 あの借用書はリビングの机に置いてきた。今は何も考えたくない。
 これからどうするか。この後どうなるか。カイジみたいにエスポワールにのって限定ジャンケンでもしなくちゃならないのか。
 どうやらまだどうでもいいことを考える余裕はあるようだ。
 あまりにも非現実的すぎるような気がして脳がどこぞにでも行ってしまったかのようである。でもこれはたぶん行ったきり戻ってこないかもしれない。
 ちらと部屋の時計を見ると、もう七時を指していた。かれこれ一時間半以上はぼんやりと打開策がない迷路に迷っていることになる。
 そろそろ姉が帰ってきそうだ。両親がいなくなってから、家計を支えてくれた姉が。このご時世に一流の機会、電子企業EMDCに勤めているが不況故、給与も若干の右肩下がりである。
 風見が言っていた風見杯。自社製品の宣伝のために賞金つきのポケモンカードの大会を開催すると言っていた。望みがあるとすればそれしかないか……。
 ふと玄関の鍵が開く音がする。
「ただいま〜」
 明るく元気な声が聞こえてきた。姉の奥村雫だ。
「どうしたの、暗い顔して」
 亜麻色の長い髪を巻いている姉さんは巻き毛の部分を指に絡めてクルクルするのが姉さんのクセである。現に今もしている。
 俺はそんな明るい姉にどうとも言うことができず、黙って借用書の紙を渡す。間もなく姉さんの表情が一変した。



 どんな絶望的な気分でも、誰にも等しく朝はやってくる。今日は朝の明るさがやけに恨めしい。
 学校を休んでバイトして、少しでも借金のアテにしたかったのだが姉さんは決してそれを許してくれなかった。こっそりバイトしてお金を稼いでも、姉さんは受け取ってくれそうにもない。
 せめて学校では明るく振舞おうとしてもうまく笑顔が作れない。
 だからと言って借金のことを話し、同情されるのも嫌だ。我ながら自分の気持ちに整理が行ってない。
「おう。翔」
「よっ」
 愛想良く振舞っているつもりでも、精彩に欠ける。恭介もそんな俺を不審がる。
「オーラが死んでるぞ。なんかあったのか?」
「まあいろいろな」
「そうか……。まぁ頑張れよ」
 恭介は戸惑った顔を作ったが、そのまま何も聞かずに席についてくれた。こういう気遣いこそがありがたいということを痛感せざるを得ない。
 当たり前のように授業には集中出来ず、周りも怪しがっていたがぎこちなく笑うのが今できる精一杯だった。



 昼休み、なんとなく風に当たりたくなって、普段は利用しない屋上に上がることにした。
 屋上は昼休みのみの開放スペースで、俺以外にもたくさんの生徒がそれなりに広い屋上でお弁当の包みを広げていた。
 いつもは教室や食堂でみんなでワイワイ食べているのだが、今日はそんな気になれずに一人ベンチに座り、ぼんやりと虚空を見つめていた。
「おい」
 誰かに声をかけられる。振り返ると、風見が立っていた。
「お前らしくないな」
「そんなこと言うほど俺のことを知っているわけでもないだろう」
「それもそうかもしれないな」
 風見が妬ましい。親がTECKの社長ってことは間違いなく裕福な家庭に生まれ、そりゃあ苦労とかはしただろうが破滅的危機には遭遇していないと思う。俺のようなスレスレ、ギリギリな生活を送っていない。……だろう。
「で、何の用だ」
「昨日言っていた風見杯についての資料だ」
 透明なA4クリアファイルが手渡される。中には言われた通りの資料が数枚入っている。
「お前は俺を倒した程のヤツだ。これくらいの大会で負けてもらっては困る。見ればわかるが、風見杯の賞金は破格の五百万だ。TECKもTECKで全力でかかってる」
 基本的に大会の概要に関する資料だった。基本概要、開催日、開催場所、募集要項、レギュレーション、ジャッジ、大会ルールなど。
 ハーフデッキの大会か。だがどんなヤツであっても必勝などはない。大会経験の少ない俺としては怖いんだ。
「このようなところでお前のようなやつが終わってもらっては困る。必ず勝て!」
 そんな心を見透かした風見の喝が俺に飛び込む。俺を見る眼差しは真剣そのものだった。こいつは本気でそう言ってくれている。
 そこまで言うと風見は踵を返し、屋上を去ってゆく。口では言えなかったが心の中で風見の叱咤激励と、俺に希望をつなげてくれたことを感謝する。
 ふとポケットにしまってあったデッキを見ると、一番上にあったバクフーンのカードまでもが俺に叱咤激励をしてくれるような気がした。



翔「今回のキーカードはバクフーン!
  気化熱は水タイプに有効なワザだ。
  俺のお気に入りのカードだぜ!」

バクフーンLv.46 HP110 炎 (DP2)
ポケパワー たきつける
 自分の番に1回使える。自分のトラッシュの炎エネルギーを1枚、自分のベンチポケモンにつける。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。
炎炎無 きかねつ  60
 相手の水エネルギーを1個トラッシュ。
弱点 水+30 抵抗力 − にげる 2


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