驚くべきか、前回のときとゲーム進行はほとんど同じであった。
ノコッチが倒れ、ガバイトも倒れ、俺のベンチはフカマル50/50とパッチール70/70とオドシシ70/70。風見のバトル場はダメージを受けたマグマラシ40/80とベンチのモウカザル70/70。
そしてガバイトが倒された俺はベンチからポケモンを一体選ぶことになる。
前回はパッチールを出していたな……。そしてわざとデッキの下に置いたガブリアス130/130を回収していた。
だが俺はそんな勿体ぶった行動はしない。手札にガブリアスをキープしておく。
「俺はフカマル(50/50)をバトル場に繰り出すぜ」
「っ……!」
風見の表情にようやくアクションが起きる。驚いたような、笑ったような。だが風見のような人間だと俺を小馬鹿にしたようにも見える。
「俺のターン。ドロー! フカマルを進化! 現れろ、ガバイト(80/80)! そしてガバイトに炎エネルギーをつけてバトルだ。不思議なてかり!」
このワザはコイントスをしてオモテなら、相手のポケモン一匹にダメージカウンターを四つ乗せ、ウラならガバイトのダメージカウンターを四つ取り除く効果のワザだ。効果のためにコインを放つ。何回転もしながら宙を舞い、カタンと音を鳴らしておちていく。
「オモテだ。マグマラシに40ダメージ!」
「ぐう!」
HPが0となったマグマラシはその場にバタリと力なく倒れる。
「サイトカードを一枚ひくぜ」
「俺はモウカザル(70/70)をベンチからバトル場へ出す」
……。ヤツは次のターン、必ず進化させてくる。フレアドライブが来たらガバイトは一発でやられてしまう。
しかし風見はフレアドライブを使えない。なぜならモウカザルにエネルギーがまだついていないからだ。フレアドライブは炎エネルギーを二つ要求するワザ。そのため、エネルギー一つで打てる流星パンチしかできない。
それでもコイントスを三回連続で成功されたら勝ち目はなくなってしまう。ここからは運次第だ。
「俺のターン、ドロー。ふん、モウカザルをゴウカザル(100/100)に進化! さらに炎エネルギーを手札からつけて攻撃する。流星パンチ!」
流星パンチは裏が出るまでコイントスをして、そのオモテだった回数×30ダメージを与える高火力の技だ。
モニター越しに風見の手元を見る。オモテ、オモテ、ウラ。
「ふん、二回だけか。まあいい。行け、ゴウカザル!」
風見は露骨に不満そうな顔を見せた。それに構わずゴウカザルはガバイトにスピードをつけたパンチを二発繰り出す。後方まで飛ばされたガバイト20/80だったが、それでも立ち上がる。HPが少ないとはいえ、残ったものは残ったんだ。
「20だけ残ったか……。ターンエンドだ。しかしHP20なぞ直に吹き飛ぶ数値だ!」
手札にはガブリアスのカード、そしてガバイトには水エネルギーがついている。
「今のターンで俺を倒しきれなかったのを後悔するんだな! 俺のターン、ドロー! ガバイトを進化させる。こい、ガブリアス(70/130)! さらにガブリアスに水エネルギーをつける!」
「何っ!?」
風見は余程驚いたのか声が若干上ずっている。しかしもう驚くのはこれで終わりだぜ。
「これで決まりだ! 行けっ、ガブリアス、竜のキバ!」
ガブリアスがゴウカザルめがけて走りだす。
「ガブリアスのポケボディー、レインボースケールは、このポケモンにエネルギーと同じタイプの弱点を持つバトルポケモンにワザによるダメージを与えるときに技の威力を+40するポケボディーだ。よってガブリアスがゴウカザルに与えるダメージは70+40=110ダメージ!」
ゴウカザル0/100はガブリアスの攻撃を受けると宙を舞い、その場に崩れ落ちる。俺が最後のサイドカードをひくことによって、3D映像のポケモン達は消えていった。
「馬鹿な……!」
「翔すげえ! よくやったな!」
信じられない風景を見たかのように唖然としている風見とは対照的に、恭介は目を輝かせ嬉々としていた。
「そんなコピーデッキで勝てると思ったか」
うなだれる風見のそばに行き、俺が言い放つ。
「とりあえず、これはお前のデッキだ。返すぜ。このデッキをどうするかはお前次第だぜ。……どうして負けたか、よく考えてみな」
黙ったままの風見の傍らにデッキをそっと置き、俺達は静かに去っていく。
「それにしてもやっぱすげーバトルだったな。俺もあれぐらいのバトルができるようになりたいぜ」
TECK本社ビルを出て、バスに乗って帰路へ。バスの中では恭介が興奮が冷めないまま大声で話していた。
「よし、それなら俺と練習でもする?」
「OK! 今度こそ負けないぜ!」
自分自身とデッキ信じる気持ちと諦めない気持ちが大事なことを、風見はあの勝負を通じて分かってくれたのだろうか……。
今はそれを考えても仕方がない。とにかくポケモンカードを楽しむだけだ!
翔「今回のキーカードはガブリアス!
強靭なHP、そしてにげるエネルギーは0だ。
エネルギーさえ合えば、一回の攻撃で110のダメージになるぞ!」
ガブリアスLv.66 HP130 無 (DP2)
ポケボディー レインボースケール
このポケモンが、このポケモンのエネルギーと同じタイプの弱点を持つバトルポケモンに、ワザによるダメージを与えるとき、そのダメージは、すべて「+40」される。このボディーは、このポケモンに特殊エネルギーがついているならはたらかない。
無無無 りゅうのキバ 70
弱点 無+30 抵抗力 ─ にげる 0