「見てろよ風見! ここからが俺のタクティクスだ!」 今、俺の場にはノコッチ60/60。そしてベンチには炎エネルギーが一つついたワカシャモ80/80。 対する風見の場には炎エネルギーが一つ、水エネルギーが二つついたガブリアス70/130に、ベンチにはもう一匹タツベイ50/50がいる。 サイドは俺が三枚残しているのに対し、風見は二枚。場の状況を考えても俺が劣勢だ。でも、まだまだ! 「俺のターン!」 俺の手札は今引いた一枚だけ。しかし今引いたカードはサポーターカードのハンサムの捜査。このカードの効果によって相手の手札を確認し、自分か相手の手札のどちらかを山札に戻させて戻したプレイヤーがカードを五枚引くことができる。 つまりその効果を自分に使えば、戻すカードがないので単純に山札からカードを五枚補充出来るのと同値だ。 「俺は手札のハンサムの捜査を発動! まずは風見の手札を見せてもらうぜ」 風見の手札はボーマンダ、炎エネルギー二枚、不思議なアメ、デンジの哲学。不思議なアメとボーマンダが多少引っかかるも、それ以前に自分がなんとかしなければ始まらない。予定通り、自分を対象にカードの補充を行う。 「俺は自分の手札を山札に戻してカードを引く。だが、俺の手札は0なので普通にカードを五枚引くぜ」 このドローで戦況を大きく変えてしまう……。来い、キーカード! 「っ、よーし! まずはワカシャモに炎エネルギーをつけて、ワカシャモを進化させる! 現れろ、バシャーモ!」 荒ぶる炎と共に進化したバシャーモ130/130が威圧するように雄たけびを上げる。ハンサムの捜査で引いた当たりのカードが、まだまだチャンスを作ってくれる。 「進化したバシャーモのポケパワー発動。バーニングブレス! このポケパワーによって相手のバトルポケモンを火傷にさせる」 ベンチのバシャーモが風見の場のガブリアスに向かって赤い吐息を吐く。数歩後退しつつ体を横に振るガブリアスは、ぶんぶんと体を振りながらなんとか対応しようとするものの勿論火傷状態。逃れる事は出来ない。 「ノコッチで攻撃だ。噛んで引っ込む」 のそのそとノコッチはガブリアスのもとへ進み寄ると、右足に噛みつく。ガブリアス50/130が鬱陶しそうに足を払うと、ノコッチは振りほどかれてバトル場まで戻される。 「威力は10しかないけど、ガブリアスの弱点は無色タイプ! よってガブリアスが食らうダメージは20だ。さらにノコッチは攻撃した後、自分のベンチポケモンと入れ替わる。その効果でバシャーモをバトル場に出させる」 ポケモンが入れ替わり、俺の番が終わる。そしてここでポケモンチェックに入る。火傷によってコイントスをしてウラの場合、ガブリアスは20ダメージを受けるが……。 「……ウラだ。ガブリアス(30/130)はダメージを受ける。今度は俺の番だ。手札の不思議なアメを発動してベンチのタツベイをボーマンダ(140/140)に進化させて水エネルギーをつける。そしてガブリアスをレベルアップさせる」 ガブリアスの体が一瞬光に包まれ、ガブリアスLV.X40/140が現れる。面倒なことにレベルアップしたため、火傷状態が回復してしまう。いや、まだある。確か──。 「レベルアップしたこのタイミングでポケパワー、竜の波動を発動。レベルアップしたときに三回コイントスをしてオモテの数かける10ダメージを相手のベンチポケモンに与える。ウラ、オモテ、オモテ。よって翔のベンチポケモン、ノコッチに20ダメージを与える」 ガブリアスの口から青色の球体が発せられ、ノコッチ40/60に触れると小さな爆発を起こす。ダメージを与えるポケパワー、危ない。もし致命傷を負っているポケモンがいる状態でこれを食らえばたまったもんじゃない。 「更にデンジの哲学を発動。手札の炎エネルギーをトラッシュして山札から六枚引く」 デンジの哲学は手札が六枚になるまでカードを引けるサポーターだ。カードを引く前に一枚だけ手札をトラッシュできる。今、風見が炎エネルギーをトラッシュしたことによって手札が0となり、六枚引いた。スージーといい手札を捨てるカードが多いということは、やっぱり来るか。 「ガブリアスLV.Xのワザ、蘇生を発動。トラッシュのポケモン一匹をたねポケモンとしてベンチに呼び出し、トラッシュの基本エネルギーを三枚までつけることができる。俺はトラッシュのボーマンダに炎と水エネルギーをつけて蘇生させる!」 あらかじめベンチにいるボーマンダの隣に白い穴が開き、そこから新手のボーマンダ140/140が這い出てきた。これでボーマンダが二匹並んだ状態となる。マズイ、ボスラッシュ並みの圧巻だ。 ただでさえ俺にはポケモンが二匹しかいない上にノコッチが非戦闘要員であるのに、こんなにバカバカと大型ポケモンが乱発されては立つ瀬が無い。 さらに加えて不味いことに俺のバシャーモはHPは130/130。このせいでボーマンダのポケボディーのバトルドーパミンが発動してしまう。バトルドーパミンが発動している限りボーマンダのワザは無色二個分だけワザエネルギーが減る。 「くっ、ドロー! ヒコザル(50/50)をベンチに出し、バシャーモに炎エネルギーをつける! 更にサポーター、オーキド博士の訪問を使うぜ。山札からカードを三枚引いて一枚をデッキの一番下に置く。そしてバシャーモで攻撃、鷲掴み!」 バシャーモがジャンプ一つでガブリアスLV.Xまで距離を詰め、その喉元に右手を出してそのまま握力で締め付ける。抵抗して両腕を振っていたガブリアスLV.X0/140だったが、次第に力を失って倒れていく。 「レベルアップしてガブリアスLV.Xの最大HPを増やしただろうが、それでも残りHPは40! わしづかみのダメージも40だ、これでガブリアスLV.Xは気絶だぜ!」 「それでもガブリアスのポケボディー、竜の威圧を発動する。ガブリアスに攻撃したポケモンはエネルギーを一枚手札に戻さなくてはいけない。そして俺の次のポケモンは今蘇生したばかりのボーマンダだ」 「竜の威圧の効果で炎エネルギーを戻す。そしてサイドを一枚引いてターンエンド」 これでサイドの残り枚数はなんとかイーブンに持ち込んだ。まだ勝機はいくらでも残っている。なんとかその糸を手繰り寄せないと。 「あの状況をここまで持ち直すとは流石というべきか。だがそれでもまだまだ足りない! 俺のターンだ。手札の水エネルギーをバトル場のボーマンダにつけてバシャーモに攻撃。蒸気の渦!」 「うおわっ!」 白い渦がバシャーモを空へと持ち上げ、吹き飛ばす。無造作に受身も取れずに落下したバシャーモ10/130は、右腕を立ててなんとか立ち上がる。 「蒸気の渦のコストとしてボーマンダの炎、水エネルギーを一枚ずつトラッシュ」 たった一撃で気絶寸前まで。しかもベンチのポケモンも全然育っていない、圧倒的不利な状況。……なのだが、俺の心はいまひとつ緊迫感がなく、むしろワクワクしている。 だってこんなに楽しいことがあるか? そうそうないぜ。風見だけじゃない、今まで戦ってきたライバル達が皆が皆強かった。こんなに一日中ワクワクドキドキするなんて滅多に無い。 「……。楽しいな」 そんな俺の心を見透かしたかのように風見が呟く。 「ああ、楽しいな。やっぱりカードはこうじゃないとな」 「まったくだ」 「……、続けるぜ。俺のターン、ヒコザルをモウカザル(80/80)に進化させてバシャーモに炎エネルギーをつける。そしてバシャーモのバーニングブレスでボーマンダを火傷にする! そして攻撃だ、鷲掴み!」 本来は100ダメージを与える大技の炎の渦を使いたかったが、エネルギーが竜の威圧で戻されたせいで計算が狂い、一枚足りない。だが足りない以上は足りないなりになんとかするしかない。 バシャーモはボーマンダ100/140の首をがっちりと押さえたまま離さない。 「鷲掴みを受けたポケモンは次の番、逃げることが出来ない。そして俺の番が終わったことでポケモンチェックだ」 「……ウラなのでボーマンダは20ダメージだ」 これでボーマンダのHPは80/140。まだ気絶には遠い。でも着実に近づいてるのは確かだ。さらに鷲掴みの効果で逃げれないため、火傷から逃れる術はない。あわよくばもうワンチャンスあるかもしれない。 それに加えてボーマンダのワザは火炎と蒸気の渦の二つ。前者は炎で、後者は炎水で使えるワザ(バトルドーパミンの計算を加えているので本来はさらに無色が前者は一つ、後者は二つ必要)。しかしあのボーマンダについているエネルギーは水エネルギーのみで、風見が次のターンに炎エネルギーをつけれなければ攻撃出来ない。攻撃さえ受けなければ──。 「俺のターン。手札の炎エネルギーをボーマンダにつける」 しかし淡い期待は見事に粉砕。しかしそれもそうか。そこまで虫のいい話もないのも当然といえば当然だ。 「そしてボーマンダで火炎攻撃だ」 ボーマンダの口から無慈悲なほど大きい火球がバシャーモめがけてぶつけられる。HPはもう尽きた。あまりにも早い展開についつい舌打ちしたくなる。 「俺の次のバトルポケモンはモウカザルで行く」 「サイドを引いてターンエンドだ」 風見はまたしてもミステリアスパールではないほうのサイドを引く。それも当然か。 それはともかく、さっき唱えたもうワンチャンスがある! 「ポケモンチェックをしてもらうぜ」 「ふん。……ウラか」 これでボーマンダのHPは60/140。さらにHPが120以上のポケモンが俺の場からいなくなったことでバトルドーパミンの効力も消え、風見のボーマンダはワザを使うのに多大なコストが必要になる。チャンスだ! 「俺のターン!」 引いたカードはワカシャモ。ゴウカザルではない。手札にはサーチカードも、ドローサポートカードもない。ここでゴウカザルがくれば一気にペースを持ってこれたのに、とはいえ仕方あるまい。 「モウカザルに炎エネルギーをつけて攻撃だ! ファイヤーテール」 俊敏な動作でボーマンダに近づくと大きく跳躍し、縦に回転しながら適当な高さに至るとその尾でボーマンダを叩きつける。背に一撃を受けたボーマンダ20/140は悲鳴を上げ、バランスを崩しかけるも持ち直す。 「ファイヤーテールは威力が40だけど、デメリットとしてコイントスをしてウラならばエネルギーをトラッシュする必要がある。……オモテなので回避だ!」 「ならばここでポケモンチェックだ。なっ……、またウラだと!?」 決まった! 残りHPが20/140だったボーマンダはこれで20ダメージを受けて気絶。ここまでおいしくは行かないかもしれないと考えていただけに、まさしく僥倖だ! 「サイドを一枚引くぜ」 「まだ俺にはもう一匹のボーマンダが残っている。俺のターンだ。炎エネルギーをつけてバトル。火炎だ!」 モウカザルよりも一回り大きな火球がモウカザルを包み込む。これでHPわずか30/80。やっぱりボーマンダとモウカザルでは地力が違いすぎる。 「もし次の番で、お前が俺のボーマンダを倒さない限り、お前に勝利はない。たとえプラスパワーなどの小細工をいくらしようともこの圧倒的なHPをモウカザルが削り切ることなど出来ない」 風見の言うとおりだ。モウカザルのままでは勝てない。せめてゴウカザルに進化させないと。でも手札にゴウカザル、もしくはそれをサーチしたりするカードがない。このドローに全てが懸かる。 俺の山札は四枚、つまりゴウカザルを引き当てる確率は四分の一。いや、サイドカードがまだ一枚あるから五分の一。それも違う。前に使ったオーキド博士の訪問でキズぐすりを山札の一番下に置いたのでやはり四分の一だ。 しかし確率論は所詮机上の空論、引いてみなくちゃわからない。信じるんだ、自分が引くことを。そしてカードが自ら現れてくれることを。 「俺のターン!」 思わずドローした瞬間目をつぶってしまう。右目を恐る恐る開くとそこには一枚のサポーターカードがあった。 「よし! 俺は手札から二枚目のオーキド博士の訪問を発動!」 残った三枚の山札を全て引く。するとそこにはきっちりゴウカザルがあった。良かった、サイドに行ってなくて。これでまだまだ戦える。勝利の可能性は開かれる! 「モウカザルに炎エネルギーをつけて、モウカザルを進化させる!」 「何っ、ここに来て進化だと!?」 フォルムをあっという間に変えて現れたゴウカザル60/110が、首を回しながら威圧するような咆哮を上げる。 「行くぞ風見! これが最後の攻撃だ、ゴウカザルでバトル。ファイヤーラッシュ!」 このワザはバトル場の炎エネルギーを好きなだけトラッシュし、コイントス。オモテの数×80ダメージを相手に与えるワザ。俺の場にある炎エネルギー全て、ゴウカザルについている炎エネルギーを二枚トラッシュする。 ボーマンダのHPは140/140。つまりここでオモテを二回出せば俺の勝ちだ! 「ま、まさか本当に二回連続でオモテを出すつもりじゃないだろうな」 「出すつもりに決まってるだろ! 勝負だ! 一回目のコイントスはオモテ!」 「っ……!」 「二回目のコイントスは……オモテだ!」 「ばっ、馬鹿な!」 「行っけえええ!」 ゴウカザルは右手に盛る炎を纏い、ボーマンダに殴りかかる。爆発のエフェクトで一瞬視界が白に包まれた。
翔「今日のキーカードはガブリアスLV.Xだ。 そせいはなんとエネルギーなしで使える! トラッシュされた仲間を蘇生させよう!」
ガブリアスLV.X HP140 無 (DP4) ポケパワー りゅうのはどう 自分の番に、このカードを手札から出してポケモンをレベルアップさせたとき、1回使える。コインを3回投げ、オモテの数ぶんのダメージカウンターを、相手のベンチポケモン全員に、それぞれのせる。 ─ そせい 自分のトラッシュから「ポケモン(ポケモンLV.Xはのぞく)」を1枚選び、「たねポケモン」としてベンチに出す。その後、のぞむなら、自分のトラッシュの基本エネルギーを3枚選び、そのポケモンにつけてよい。 ─このカードは、バトル場のガブリアスに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─ 弱点 無×2 抵抗力 ─ にげる 0
─── 風見雄大の使用デッキ 「ドラゴンエフォート」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-675.html
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