マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.562] 22、トウカジムリーダー戦 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/03(Sun) 17:44:14   52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 目の前の扉を開ける。どんなポケモンの攻撃も受け付けないような造りになっている。そしてその向こうには、父親でありトウカジムリーダーのセンリが待っている。ガーネットが入ると、静かに言った。
「思ったより時間かかったんじゃないか?」
最初に強くしてくれと言ってきてから一週間。初めは最初のトレーナーにも苦戦していた。まさかの強さに持っているポケモンたちを皆きたえた。どれくらいとは解らない。けれどこれをしなければ、やたらと感じる視線を撥ね付けることができない。そう思っていた。
「思ったよりかかった。そこらのとはレベルがとんで違う」
「それは光栄。それがポケモントレーナー、そしてジムトレーナーだ。さて、ここに来たということは、私も手加減はしない。ガーネットも本気でかかってくるんだ」
「わかった」
ガーネットは深呼吸をする。緊張しないわけじゃない。そしてボールを握り、宣言する。
「ジムリーダーセンリ、勝負!」
現れたシリウス。頭のヒレが二つに分かれ、ラグラージへと進化したばかり。トレーナーたちと何度も戦う上で進化したもの。対するセンリは、ケッキングを繰り出す。
「ケッキングはなまけっていう特性がある。最初の1回の攻撃を避ければ・・・」
体に溜め込んでいる泥をなげつける。顔にかかるが、ケッキングは別にそれがどうしたと言わんばかりに動かない。そういえば家にいた時もこうだった。そしてやたらとけだるい声をあげる。それを見ていたシリウスにもそれは伝播する。眠気を誘う、ケッキングの常套手段だった。
「戻れ、そして行け」
レグルスと呼ばれたザングースが場に出る。ジムのトレーナーたちが言っていた、攻撃力を上げる技があると。ガーネットはレグルスに命じる。激しい動きで動き、攻撃力を上げる、剣の舞。爪が長い剣のように見える。ケッキングはそれをぼーっとみていた。なまけているのだ。
「きりさけ!」
走った。宿敵を倒すかのようにレグルスはケッキングに鋭い爪で切り裂く。これでたいていのポケモンは倒して来た。けれど相手はジムリーダーのポケモン。予想以上に耐える。そもそも、ケッキングは何が起きても表情も動きも変わらないから、端からでは本当に解りにくい。
「進化すると、それだけ耐久が増えるんだ。それくらいではやられることはない」
ケッキングは起き上がる。ガーネットは久しぶりにケッキングが起き上がる瞬間を見た。その太い腕、大きな拳から放たれる技がレグルスの体を捕らえる。そのまま体が浮き上がると、何の抵抗もなしに床へと落ちた。今の攻撃でだいぶ体力が持って行かれてしまった。戻すか戻さないか。しばらくケッキングは動かないはずだ。けれど考える暇はない。正直、ここまで強いとは思わなかった。
「ブレイククロー!」
次のポケモンに賭ける。そのためにもレグルスで出来ることを。あまりの鋭い攻撃に、受けたポケモンの防御力が下がるこの技。1度、切り裂く攻撃を受けていたのもあり、ケッキングはさらにだらけた姿勢を取る。それがノックダウンの印だと解るのは、センリがケッキングを戻したため。攻撃力が上がっている今ならば、倒れることなく次もいけるかもしれない。
「弱ってるところを狙え」
センリが出したのはヤルキモノという白い猿。ケッキングと違って、素早く、そして怠けない。レグルスが指示を受けて攻撃を体勢に入る直前、ヤルキモノのきりさく攻撃を受けた。2、3回後ろにまわりながら床に伏せる。確かにヤルキモノは素早い。けれども、ケッキングほどの攻撃力は無いはずだ。再びシリウスのボールを出す。
「マッドショット!」
素早さを下げれば良い。体に溜め込んだ泥を飛ばす。その角度を見切ったのか、ヤルキモノが横に避けた。
「きりさけ!」
詰め寄る速度も普通のポケモンとは違った。シリウスの死角から近づき、気づいた時には避けられない距離まで。爪跡がシリウスの体にくっきりと残る。いくらラグラージは体格が良くて体力があっても、何度もこうされては倒れるのも時間の問題。
「どうした?耐えるだけか?」
シリウスはじっと顔を手で覆う。その間にもヤルキモノはシリウスに傷を付けて行く。そして再度、ヤルキモノが空中に跳んだ。
「いまだ、我慢を解き放て!」
今まで受けた傷を全て相手に返す技。ガーネットの指示にあわせてヤルキモノに拳を向ける。空中にいるヤルキモノは避けることが出来ず、シリウスの反撃を全てくらった。
「なるほど、ね」
それでもヤルキモノはまだ起き上がる。1秒足りともじっとしていられない。センリのかけ声に再びシリウスに爪で切り裂く。
「戻れ。行け、リゲル」
2本の足でリゲルが立つ。進化してから一番鍛えたポケモンだ。速さはヤルキモノより遅い。けれど絶対に最初に出る技がある。
「マッハパンチ!」
目にも止まらない拳がヤルキモノをとらえた。これにはヤルキモノでも耐えきれない。センリはボールに戻した。これがガーネットの知る限りの、センリのポケモンだった。
「よし、倒した!」
「ガーネット、相手の事を知ったつもりになるのが一番の命取りとなる」
こちらに来てからその力をつけなかったわけではないだろう。センリとしても、常に強くなる努力を怠るわけがない。ガーネットがそのことに気づく前に、センリの3体目、再びのケッキングが現れた。
「対策もできる、まずはしびれごな!」
同じポケモンならば戦い方は一緒だ。リゲルが頭の笠からしびれごなを振りまいた。ケッキングの体が麻痺しているのかしていないのかも妖しいけれど。安心した時、リゲルを打つ大きな音がする。扉まで吹き飛ばされ、目をまわして倒れているのだ。
「攻撃技でなくて良かったよ。相手がどういう状態にあるかを見てから指示を出す臨機応変さも必要なんだ」
そういえば、このケッキングは大人しかった。ずっとなまけているのだとばかり思っていた。気合いを入れていたのだ。このケッキングの切り札、気合いパンチ。攻撃されると出せない技ではあるが。
「・・・マイナン、いけ」
大きなケッキングを見て、マイナンは少しひるんだ。けれど動かないと見ると、ケッキングに甘える。攻撃力をがっくり下げ、相手の弱体化を図る。ケッキングはしびれているのかなまけているのか区別がつかない。しかし、そろそろ動くはずだ。センリが指示している。
「からげんき」
ケッキングは立ち上がった。大きな体は、誰が見ても怖い。マイナンも驚いて逃げようとするが、ケッキングの足の攻撃にガーネットの腕の中に戻る。麻痺させたことが仇となったようだ。状態異常の時に攻撃力が上がる技。攻撃力を下げようとも元のケッキングの力は高い。焼け石に水状態のケッキングに、ガーネットは頭を悩ませた。残るボールは2つ。どんなに鍛えても未だ進化できないシルク、そして戦いを好まないカペラ。少しでも、とカペラのボールを選択する。
 わたくものような翼を持つカペラ。大人しくて戦いを好まないのは知っている。だからこそ、一番育てにくかったし、進化もとても遅かった。青い体は大きくなり、翼もひろがったチルタリスは、ケッキングを見ると高い声でさえずる。
「ケッキング、眠れ」
センリが指示をすると、少し遅れてケッキングが目を閉じる。その間にも、カペラはケッキングにも体ごとぶつかっていたのに。眠って体力を回復する技だと解る。麻痺させたのも全て無効。攻撃力が低いカペラの突進も全て無かったことにされてしまった。
「竜の舞」
翼を広げ、円を描くように飛ぶ。攻撃力と素早さが上がる技。攻撃も低いカペラにとって、必要不可欠な技だった。その間、ケッキングが攻撃されないのを良い事に、気合いパンチを放ってきた。痛そうにしているが、チルタリスとなったカペラにとって、格闘技はそんなに痛いものではない。
「カペラ歌って眠らせて!」
美しい声が広がる。ケッキングは多少ふらつくが、眠ったばかりなので、眠気を引き起こすことは出来なかったようだ。けれど、ケッキングは今、だらーっとなまけている。
「竜の息吹」
歌う時と同じく、息を吸い込むと目に見える気流がケッキングに襲いかかる。全体に行き渡り、末梢の神経をぴりぴりとさせる。
「からげんき」
麻痺しているケッキングの攻撃は凄まじい。わたくもの翼をこれでもかというほど拳を入れる。
「戻れカペラ」
戦えない程ではないけれど、ほとんど体力はない。元気なのはシルクだけ。どんなに育てても進化しなかった。けれど、今ここで出さなければ負けを認めることになる。ガーネットはシルクのボールを投げた。
「炎の渦!」
ケッキングはだらけている。シルクはケッキングのまわりを走り、風を作る。その気流に炎が乗り、ケッキングを囲い込む。次に来るはずの攻撃はきっとからげんき。その攻撃を食らったらおしまいである。
「シルク、とびはねろ!」
他のポニータよりジャンプが下手。着地も下手。もちろん、とびはねたのだけど、あまり高度は高くない。ケッキングが攻撃を空振りする。その直後、シルクのダイヤモンドより堅い蹄がケッキングの顔に命中する。痛いはずなのだが、ケッキングは表情一つかえずになまけている。
「もう一度!」
とびはねた。2ターンかかる技というのは、他のポケモントレーナーに避けられている。次の行動が読めるから、と。けれどケッキングの攻撃を避けるにはこれしか無い。
「シルクはジャンプ苦手なんだよな。もう限界なんじゃないか?」
3回目に飛び上がった時、1回目より確かに飛び上がった高度が低い。堅い蹄でケッキングに攻撃するけれど、次はもう出来ないかもしれない。それにこの技は命中に不安がある。飛び上がるので、正確な狙いが定められないのだ。もし、外した時に気合いパンチなどされてしまえばそれこそ終わり。特に足を狙われてはシルクは戦えない。
「次は外す。ケッキング、ポニータが飛び上がったら気合いパンチだ」
「させるか。命中させてやる。かえんぐるま!」
炎のたてがみが燃える。そして頭からしっぽの先まで炎で身を包む。そのままケッキングに向かって手加減なしに突進する。ケッキングは言われた通りに集中する。これが外れたらシルクは倒れる。これが当たったらケッキングが倒れる。どちらかの賭けだ。炎技も苦手で、走ることが大好きなシルク。本当は戦いに向いていないのかもしれない。
 ケッキングが聞いた事もないような悲鳴をあげる。炎がケッキングにうつっていた。火球となったシルクがケッキングの腹に思いっきりぶつかっていた。まとっていた炎は全てケッキングにうつる。慌てるようにセンリがケッキングを戻した。そしてシルクは次の準備に入る。姿勢を低くして、足に力を入れて。鋭い角を振りかざし、相手を威嚇するように。
「ギャロップ・・・」
他のギャロップよりは小さい。けれども、シルクは確実にポニータからギャロップへと進化していた。
「はは、さすがじゃないか。上級者向けと言われてるポニータを進化させるなんて」
センリは懐から何かを取り出す。そしてガーネットへと差し出した。それを受け取る。ジムリーダーに勝った証のバランスバッジ。それはシルクの炎に照らされて光っていた。
「ジムリーダーとして受けた勝負に負けたのだから、渡すのが筋だろう。おめでとう、ガーネット」
この時やっとガーネットは、終わったことを確信した。永遠に終わらないかと思われたものが、勝利の証となっている。
「ありがとうお父さん!じゃ、私帰るから!」
「夕方は雨降るから気をつけてなー。ポケモンは回復させてから帰るんだぞー」
すでに親子の会話となっていた。受け取ったバッジを大切に鞄にしまうと、ポケモンセンターに入っていく。進化もできた。強くもできた。これならばいける。ポケモンセンターを出た後、ガーネットはカゼノ自転車を組み立てると、トウカシティの外れへと向かう。

 時々、ポケモントレーナーが近くを通るけれど、軽い挨拶を交わすだけにした。急いでることを伝えると、たいていは身を引いてくれるものだ。そしてガーネットは進みに進んで、ほとんど人が通らないトウカの森へと進む。
「待っていたのよ」
ブレーキを握り、自転車から降りる。倒れないようにそれをたたむ。そして目の前の相手と向かい合った。
「ええ、私も待っていました。私の前に現れてくれるの」
青いバンダナ、そして海賊のような風貌。豊かな髪が特徴のイズミだった。本当は会いたくもない。けれど決着をつけなければいつまでもつけられてしまう。そしてセンリにも迷惑をかけることになる。
「そう?その割にはおびえてるように見えるけど」
「そう見えるなら話は早い。私はアクア団に協力しない。事件のことは解決していないけど、アクア団のような集団に属してまで解決することじゃないし」
イズミはため息をつく。残念ね、と。
「ならば貴方をもう一度捕獲するまでよ」
「何がそう私に執着するのか解らないけど」
マイナンのボールを開く。出た瞬間から電気をため始め、辺り一面へ電気を飛ばす。電撃波だった。隠れていたアクア団たちは出ばなをくじかれた。次にシリウスがボールから出される。後ろから近づこうとしたアクア団には、リゲルがマッハパンチで吹き飛ばす。
「これ以上、ケガしたくなかったら」
シルクが鋭い角を振り回す。危なくて誰も近づけない。
「二度と私に近づかないで!」
カペラが歌い、眠らなかったものをレグルスがきりさく。指示をしなくても攻撃するよう訓練もしてきた。それならば追いつかない場合にポケモンたちの判断で攻撃が出来る。アクア団を意識しての練習を重ねた結果。
 自分たちより強いポケモンに、イズミは不利と判断する。戦力を削ぐのはよろしくない。イズミは撤退の命令を出すと、煙のように消えていた。


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