マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.564] 23、決意 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/03(Sun) 20:29:50   52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ポケナビに連絡が入る。ホムラからだった。呼び出しかなと思って出た。寝起きだったために、声に張りがない。軽い挨拶から入る会話は、いつものようなのんびりとしたもの。
「そうそう、この前いってたあの子いるじゃん?」
「はいはい、ガーネットですね」
「マグマ団に来ねえか?って伝えて」
「待ってください。そのためには俺が死ぬじゃないですか、やめてくださいっていうかそんなんだったらホムラさんが直接いってください」
きっとマグマ団なんて口にしたらそれこそハルカ以上の殺意で来るのは間違いない。もうそれだけはこりごりだ。
「なんだ、隠し通してんのか。これはお前にも伝えておくが、アクア団のさあ、アオギリの片腕のイズミっていうやついるじゃん。ちょー色っぽい姉ちゃん」
「ホムラさん・・・そんな事思いながら戦ってたんですか」
色っぽいかどうか、ザフィールには理解できそうにない。常に戦ってきたし、強さは他の団員と全然違うし。
「当たり前だろ。カガリの足も中々いいが、俺はイズミのが色っぽくていいなあと思ってんぞ。お前、カガリを口説こうと思うか?」
「あのですね、話が脱線してますよ。それで、イズミがどうしたっていうんですか」
「ああ、あの子をアクア団に頻繁に誘ってきてるらしいし、カナズミにいる仲間からの連絡で、イズミとあの子が会ってるところを見たらしい。アクア団に誘われる前に、こっちに誘えば良し。これに関して、ボスの許可は降りてるからがんばれ」
ポケナビが切れる。全くいつも言いたいことだけいって切るのだから、解らない。質問は受け付けてくれないのがホムラの欠点だと思う。幹部なら少し下のものの気持ちを考えてくれてもいいのに。
 ザフィールは布団の中でそう思っていたが、ホムラの言葉をもう一度思い出して気づく。イズミがガーネットと会ってるということ。何をのんきに自分の先輩の考察をしているんだ。すぐに着替えると、ポケモンと共に家を飛び出した。

 受話器を置く。マグマ団のアジトにある会議室にホムラはいた。といっても、そんな人数が入れるものではなく、主にマツブサと今後の方針を決める時に使う部屋なのだが。ホワイトボードに書かれた内容を読み直しながら、イズミとカガリだったらやっぱりイズミのが色っぽくて口説きたいと思う。
「へえ、色っぽい姉ちゃん、ねえ」
「そうそう、まじ色っぽいんだよー。ああいうボンキュッボンな女が・・・ってカガリ!?」
後ろを振り向けば、ジュペッタのような怨念付きのカガリ。
「口説こうと思わないとか、余計なお世話なのよあんたは!!」
「い、いや、それとこれは・・・ああおやめになって・・・うひょひょひょ・・・・!!」
カガリのエネコロロのくすぐる攻撃がホムラにヒットしている。その後もずっとホムラの特徴的な笑い声が聞こえてきていた。


 アクア団は去っていった。しばらくはミシロタウンで自由に行動できそうだ。ただ、アクア団の反撃で、カゼノ自転車のギアが外れてしまった。これはどう力を入れても直せそうにないし、下手にいじって壊れてしまったらもったいない。
「仕方ない、シルク乗せて!」
少し大きくなってしまったから、1回じゃ届かない。少ししゃがんでもらい、ようやく背中に乗る。そしてガーネットの指示の通りにシルクは走り出した。ポニータの時より早く、そして長い距離を走る。トウカの森からミシロタウンなど、下手な鳥ポケモンよりも早かった。
 ミシロタウンの特徴、大きな建物であるオダマキ博士の研究所が見えて来た。もうそろそろ減速しないと家を通り過ぎて知らないところにいってしまいそう。ミシロタウンの入り口でシルクをボールにしまった。そこからゆっくりと歩く。そろそろテッカニンの声が聞こえて来てもおかしくない季節。少し探検しながら帰ろうか。
 ミシロタウンの公園には、小さな子が遊んでいた。野生のジグザグマがちょろちょろ走っている。特に一緒に遊ぶわけでもなく、かといって逃げるわけでもなく。ほどよい距離で、二つのグループが存在していた。
「今日は疲れたなー。緊張したし」
ジムリーダーの実力というのはやはり凄かった。そこらのトレーナーに勝てるからといって、ジムリーダーに勝てるわけがない。木々の下にあるベンチに座ると、一息ついた。隣にはシルクが座っている。
 シルクがふとそちらを見た。そして頭を低くし、角を相手に突き出す。
「なによ、別に危害くわえようっていうんじゃないわよ」
ガーネットも気づいた。その独特のイントネーションに。もう帰ったと思っていたが、まだいたのか。先日のハルカだった。足元にはアチャモがいる。心配するオダマキ博士にもらったのだとか。ガーネットには信じられなかったが。
「いちゃ悪いわけ!?」
機嫌が悪いのか悪くないのか、ガーネットには解りかねる。ザフィールはいい子だといっていたが、それが信じられない。特に話していると信じられなくなってくる。
「事情も知らないで、私たちの事に口出さないで!」
「いやそれはこっちの言葉だけど。あんたはどう思ってるか知らないけど、ザフィールは事件の証拠なんだから勝手に持って行かれても困る」
「な、なによそんな破廉恥な!」
ハルカが顔を赤らめて言う。何を変なこといったかガーネットには解らない。
「あ、あんたさーくんのこと好きなのね!だからそうやって・・・」
「好きなのはそっちでしょ、人のことをぐだぐだ言ってんじゃ・・・」
「ガーネット!?」
大慌てでザフィールが走ってくる。髪も乱れ、服も乱れて。きっとこんな時間まで寝てたんだろう。ハルカの姿を見て一瞬驚く。
「だ、大丈夫か!?あの、その、アクア団のイズミと接触したって・・・」
「ああ、大丈夫。ポケモンも強くなったから、追い払ってみた」
軽く言われて、ザフィールはため息なのか息を切らせてるのか解らないような呼気を吐く。そして、そんな彼にハルカはべったりとくっついていた。ガーネットとしてはとても面白くない光景。昨日、助けてやってラブラブ解決ですかそうですかと言葉が出そうになった。必死に引きはがそうとしているザフィールを見ると、この後に及んで男だったら覚悟決めたらいいと思う。ため息をつき、彼に投げかける。
「だから大丈夫、もうザフィールに迷惑かけたりしないよ」
「迷惑って思ったことはないけどさ、お前がアクア団の口車に乗せられてたらどうしようって・・・」
「うん、本当は途中まで迷ってたんだけどね」
「なんだって?じゃあ、フエンで言ってたのは本当なの?」
フエンで何したのよ、とハルカが叫んだ。私を差し置いて浮気したのね、とザフィールは散々せめられている。やはり付き合ってるのかと再度聞いたが、ザフィールは否定し、ハルカは肯定する。
「・・・とりあえず、それは本当。解決したとしても、私がアクア団にいたってことが事実として残ったら、それは・・・」
目が合った。今はその先を言葉に出来ない。ハルカがいるからではなく、ザフィールに言ってはいけないこと、いいことが混ざった言葉だから。結局、ハルカと付き合っていないと否定しても、それは心からではないのだろう。その証拠に、二人はぴったりと寄り添っていた。
「ごめん、今日は疲れたんだ。色々合って。だからもう帰る。じゃあね」
二人に背を向けて歩く。シルクがいいのかと言うように横を歩いていた。頬のあたりをなでると、喜ぶように鳴く。
「いい、シルク。私はザフィールのことなんて好きじゃないからね。くれないも勘違い甚だしい」
家の前に着く。玄関を開ければ、そのくれないがおかえりと迎えてくれた。


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