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前書き:ミクダイ(ミクリとダイゴ)です。
カップリングタグが詐欺ではないかくらいに、ミクダイ成分は薄いのですが、キスシーンなどありますのでね!
またしてもポケモン凶暴化! 児童ら6人死亡
実力のあるトレーナーを緊急募集。資格はジムバッチ5個以上所持している者。
新聞もテレビも、そのニュース一色となっていた。ミクリは新聞を折り畳む。
突如としてポケモンが凶暴化し、人を食らってどこかへ消える。最初はトレーナーのしつけの問題だと叩かれていたのだが、そのうち野生のポケモンも同じように凶暴化していった。タイプに差はなく、種類にも差はない。ホウエンを中心に全国で見られ、病原菌説、放射能説、どこかの悪の組織による陰謀説などがささやかれていたが、原因は不明のままだった。
ただ一つ解るのは、凶暴化したポケモンに噛み付かれた人間は同じように凶暴化し、人間を襲う。そんなものフィクション映画の中だけの話だと思っていた。
そんな事態を収集する為にチャンピオンや四天王は連日出動していた。狂ったようなポケモンに太刀打ちできるのは並のトレーナー以上でないと厳しい。もちろん、ミクリもほとんど家に帰っていなかった。疲れた体を寝床に放り出して、ポケモンたちにかける言葉もそこそこに目を閉じる。
こんな状況でジムを開けられるはずもなく、どこのジムも今は休業状態。情報だけは綿密にやりとりしている。ミクリのポケナビにも常に他のジムリーダーからの情報が流れ続けていた。ただ今はそれを見る余裕がない。ざっと目を通して再び目を閉じた。
「フエンジムリーダーと、トウカジムリーダーか……」
凶暴化したポケモンに噛み付かれた。病院で手当を受けているがスタッフを突き飛ばしてどこかへ走り去った。その数時間後、遺体となって発見されたと。
噛み付かれてしまったらどうなるのか、ジムリーダーの立場だからよく知っていたのだろう。人間を襲って殺すよりは自分で決着をつけると覚悟の上だったに違いない。もしミクリが同じ立場になったら、そんな覚悟が出来るだろうか。けれど今はもう何も考えたくない。
思わず悲鳴をあげて起きた。首筋に冷たいものが当たったのだ。トドグラーのアイスボールのようで、情けない悲鳴だった。何をするんだと叱ろうとトドグラーを見れば、ポケナビをくわえている。エントリーコールが鳴り続けていたようだった。その相手は同じくずっと引っ張られてるだろうダイゴからだ。
「もしもし」
寝起きの声で答える。ミクリは半分寝ていた。
「もしもし、ミクリ? 今から会えないかな」
「ダイゴは忙しくないのか? 私はようやく休めてて……」
「あ、そうなんだ。今からミクリの家に行けばいいかな?」
直接言わないと解らないのか。睡眠を邪魔された怒りが爆発する。
「だからそういうのは」
「これは今じゃないとダメなんだ。本当ごめん。じゃあ今から行くから」
コールが切れる。来たとしても入れるものか。気にせずに眠っていればいい。目を閉じてまた眠ることにしよう。ポケモンのように短時間で回復できない。ミクリがうとうとし始めた頃、玄関のチャイムがいたずらかと思うほど激しく鳴る。
やつが来た。寝ている振りを決め込もうとミクリは起き上がらなかった。しかしチャイムは鳴り終わらず、疲れた耳にがんがん響く。迷惑だ、帰れと言うためにだけにミクリは起き上がる。廊下を歩いている間もチャイムは鳴り続ける。玄関についているのは、はやおしボタンではない。
「ミクリ!」
玄関を開けた瞬間に、ダイゴが飛び込んで来る。そして恋人かのようにミクリに抱きついたのだ。出ばなをくじかれ、怒鳴ることを忘れてしまった。
「ミクリ、本当にごめん。でもミクリに会いたくて仕方なかったんだ」
キスするかのように、ダイゴはミクリの頬を捕まえる。とっさにダイゴの手を振り払った。その瞬間、ダイゴの目が驚いていたように見えた。驚いたのはミクリの方だというのに。
「で、用件は?」
「……二人きりで話したい」
真剣な顔をしていた。ふざけているようには思えないし、寝る前に見た情報のことで何かあったのかもしれない。ミクリは玄関をしめて、ダイゴをリビングに案内する。
「ミクリ……トウカとフエンのジムリーダーが自殺した」
「知ってる。情報はまわってきている」
出したお茶を一口つけると、ダイゴはミクリの目をそらしがちに話し始めた。
「遺体からは何も発見できなかった。それは公式発表だけど」
「……制限したんだ」
ダイゴが顔を上げる。疲れからか顔色が悪いように見えた。
「ミクリ、本当ごめん。僕が一番信頼してる友達だから、ミクリには言っておかないといけないと思った」
「何を? 制限してどうするつもり? 発表した方が防げることじゃないの?」
「……ポケルスって知ってるかい? 何の症状もでないけど、感染すると強くなりやすい病気」
「知ってる。それを利用した注射も今は出回ってるじゃないか。それが何か?」
「ポケルスを使ってもっと強くできないか。そう、もう今までの強さなんか目じゃないほど強くなれないか。そう研究していたんだ。デボンの研究班が。最初は本当に純粋な研究で、微生物を取り扱う手法だってちゃんとしていた。けれどそれを金に目がくらんだ研究員に持ち去られた」
「まさか、その研究員が?」
「そうだよ。そこから全てが始まったんだ」
ダイゴの顔色の悪さは疲れからだけではない。身内から出た重大な事件。その真相を抱えて、ひたすら事態の収集に努めていた。チャンピオンだからという理由だけで戦っていたのでない。
「いくら裏切りとはいえ、デボンがしていたこと。だから僕が責任を持って始末しなければならない」
「待て」
思わずミクリが叫んだ。もう長い付き合いで、ダイゴのやろうとしていることが解らないわけがない。
「いくら原因がデボンの研究だとしても、もうダイゴ一人でどうこう出来る問題じゃなくなってる」
「解ってるよ。本当、みんなを巻き込んで申し訳ないと思うんだ。だからね」
最後にミクリに会いたかった。そういってダイゴは笑う。
心を貫かれたようだ。この男は死ぬ覚悟でいるのだ。責任を取るために。一人では収拾がつかないことが解りきっているのに、解決するためだけに。
「それに僕の後を任せられるのはミクリしかいないと思ってる。後はよろしくね」
行くな。行くなダイゴ……
立ち上がるダイゴに抱きつくようにしてタックルした。バランスを崩してダイゴが床に倒れる。
「な、何どうしたのミクリ!?」
自分の上にミクリがいる。この状況が全く飲み込めず、ダイゴは混乱している。光の影になってミクリの表情が解りにくいが、目が怒ってるのだけは理解できた。
「約束できる?」
「えっ? なにを?」
「ダイゴのことだから言っても聞かないだろうから……死なないと約束できるか?」
「そんなことわから……」
「死なないと約束できるか!? 絶対に生きてもどって、チャンピオン続けるって約束できるか!?」
ダイゴの口は閉じたままだ。ミクリも無茶難題を押し付けているのは解ってる。実力者ですら殺されてしまうのだ。ダイゴが絶対に無事だという保証なんて何処にも無い。それでもダイゴが面識のない人間を失って申し訳ないと思うのと同じように、ミクリは目の前の友達を失いたくない。
しばらく沈黙が続く。その間、ダイゴはミクリの目を見たり、そらしたり落ち着かなかった。ミクリの目は真剣で、本気で心配している。それを不確定な言葉で退けることは出来ない。けれど生きて帰る保証など何処にもない。
「ミクリ……?」
ミクリがダイゴに抱きつく。頬がふれあい、互いの息が聞こえる。
「約束できないなら帰さない」
「……ごめん」
「ダイゴはチャンピオンなんて誰でも出来るなんて思ってるかもしれない。けどダイゴは一人しかいないんだ。だから、止めないけど生きて戻って来い」
「ありがとう。……僕はミクリと友達で良かった。ミクリのことが大好きだ」
ミクリが少し顔を離す。目が合った時、ダイゴが少し笑う。
「こんなに思ってくれるミクリのためにも、僕はこの事態を収拾しないと。でも大丈夫。きっと生きて帰る。実はワクチンも同時進行で開発しているんだ。まだ実用化していないけれど、それさえ出来れば怖いことなんて何もない」
「嘘じゃないだろうな?」
「嘘じゃないよ。本当だ。もっと本当のことを言うと、責任責任って責められてて死んでもいいやと思ってたけど、ミクリのおかげだよ。絶対に生きてまた会いたい」
少しミクリが体を起こす。ダイゴもようやく床から起き上がった。
「……ダイゴ」
唇にやわらかさが触れた。再び耳に呼吸音が聞こえる。驚いたが、ダイゴはそのままじっとミクリの唇に触れていた。
「帰って来いよ」
そういうとミクリはダイゴの上から体を退ける。目を合わすことなく、そっぽをむいたまま。ダイゴは立ち上がり、そんな友人の熱烈な激励にありがとうと言って部屋から出ていった。
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バイオハザードパロをポケモンでやったらどうなると話してたら、こんなのが浮かんだ。
ジュラシックパークも、こんな裏切りの研究員のせいであんなパニックになったよなーと
【書いてもいいのよ】【続き書いてもいいのよ】【書いてほしいんだけどな!】
僕の友人は、突飛なことを言い出すのが多いやつだった。
「なぁ…モロバレルって、怖くねぇか?」
ランチのサンドサンドを片手に持ったまま、友人はぽつりと空を見上げて呟いた。
「はぁ?」
「いやさっきのポケモン進化史の時間さ、ちょっと考えたんだよ。あいつら、なんであんなカッコなのかなって」
モロバレル…ウツギ式タマゴグループでは植物グループ、タイプは草・毒で第一進化体。イッシュ地方にのみ生息する、割とマイナーな草ポケモンを、生粋のカントー人の友人がわざわざ話に出してまで怖がることが、僕には理解できなかった。
「なんでだよ?モンスターボールへの擬態はオーキド博士の時代から既に確認されてるだろ?そんな怖がる必要性ないだろ」
僕はライチュウコッペにかぶりついた。カスタードがこぼれそうなのを、慌てて直す。
「そうだけどさ…アレとは違う気がするんだよな。なんとなく」
「アレって…ビリリダマだよな?」「そうそうそいつ」
友人はびしりと指を伸ばした。
「あいつらは都市部とか工場で暮らしてるだろ?だからモンボに化けて、人間…俺らに生息範囲広げてもらえるから、あぁなってんだろ、多分」
でもモロバレルは違うと思うんだよ。そう言って友人はサンドイッチを一口かじった。
「なんでだよ?」
「モロバレルの住みかは森林……森でわざわざ赤色のモンボに擬態する必要あるか?」
確かに緑ばかりの森では反対色の赤は目立ちすぎるけど、僕はお茶を一口すすって答えた。
「そりゃ、トレーナーを騙して捕まえてもらうためだろ。実際あいつらの生息地はそんな密林じゃないし。実際、騙されたトレーナーの例も上がってるんだから、そんな気にするまでもないんじゃないか?」
それでも友人は納得しなかった。
「いや、違うね。もし捕まえてほしけりゃもっと小型化するはずだ。バチュルみたいに」
「タマゲタケなら小さいだろ」
「そりゃ当たり前だろ。進化前なんだから。俺が言いたいのはなんてかな……最終的な目的なんだよ。意図っていうか、生物としての目的というか」
「生物としての目的、ねぇ……」
僕はさっきの進化史の授業を思い出していた。
様々な姿を持つポケモン、しかしその姿かたちには無駄は一切無くて、きちんとした理由がある。
例えば、ピカチュウのとがった耳は微細電流の充放電のため。黄色い体は警戒色。バッフロンの頭は衝撃からの保護。エアームドのスキマのある翼は空気抵抗を減らすため。
一見僕らには無意味に見えるものにも、きちんとした存在意義がある。その目的を、僕らにわかるよう"翻訳"するのが研究者の仕事だ。
そして今、僕の目の前で友人はまさにモロバレルの姿を"翻訳"しようとしていた。
「オレ…あいつらの擬態は、トレーナーがいたから生まれたと思う」友人は神妙な顔でうつむいた。
「あいつら…笠を動かしてポケモンをおびき寄せるだろ?あれって、モンスターボールが人間の使う、安全な道具であることを利用してるんじゃねぇのか?」
友人は腰から紅白のモンスターボールを外した。つるりとした表面に、歪んだ僕らが映る。
「つまり…あいつらが僕らの"生態"を…」
「そう、利用した」
僕の背中に、何故か急に冷たいものが走った。
「……おいおいおいおい」
「…な?怖いだろ?俺らが利用してきた技術が、ポケモンに使われてんだからな。まだあいつらは騙しで終わってるけど…この先、モロバレルの次にどんな奴がでてくるんだろうって考えたら、急にな」
友人は少しひきつった笑いを浮かべた。
「…手がモンスターボールとかか?」
無意識のうちに、僕は冗談を口にしていた。言うべきではないと分かってはいたけれど、口にしてしまった。
「そうそう。体の中に味方になるポケモンが入ってるとか」
友人は笑い方をいつものものに代えて言った。
「そりゃ大変だな。ボールが二ついる」
「中から別なほうが押し開けてくるとか?」
冗談を言う僕と同時に、一枚の絵を思い浮かべる僕がいる。
草むらを走るポケモン。技を受けて怯んだそこに、投げられる赤と白の人工物。揺れが収まったそれを、同じ姿のポケモンが拾う。
「…そういやそう考えると、イッシュには人間を利用するポケモンが多い気がするな」
僕は頭のなかの絵を振り払い、努めて冷静に言った。これはあくまでも話を元に戻しただけ。そう思い込みながら。
「ヒトモシの生命力吸収だって…トレーナーの来訪前提だし、バチュルもさっきのお前の話じゃないけど、くっついて都市で繁殖する点じゃ、ある意味利用してるよな」
「あぁ。それにイッシュには生物学的に新しいポケモンも多いって聞いたし…」
斜め上を見上げながら、友人は続ける。
「………」
「………」
しばらく、僕らは沈黙していた。
「…ま、俺の考えすぎだろうな」
長話悪かったな、と無理矢理のように言って、友人は残りのサンドを一口で飲み込んだ。さっき外したモンスターボールを腰に戻し、よいしょっと立ち上がる。
「次の講義ってどこだ?」
「あ、えっと……B棟ってヤバくね?時間ないぞ」
僕は慌ててテーブルの荷物をカバンに突っ込んだ。
「走って間に合うか?」
「多分な。おい、一個モンボ忘れてるぞ」
友人の指差すテーブルの足元に、未使用のボールが一つ落ちていた。
「あ、悪い悪い」
僕は一瞬ボールに手を伸ばしかけて、ふと、このままボールを置いておいたらどうなるのだろうと考えた。そして、ボールをつかんでカバンに押し込んだ。
ニンゲンは、考えたくないことを後回しにしたがる。
この生態も利用されてるのかと思いながら、僕は友人の後を追った。
"Shallow belief" is the end....
[あとがき]
かがくの ちからって すげー!なポケモンの世界ですが、正直言って、電子化される生き方ってポケモンにとってどうなんでしょうね。
電子世界での繁栄・人間なしじゃ不可能な繁栄は幸せなのか・・・・というかただの手段なのか。
そんなことを考えました。
ちなみにモロバレルってポケダンで鬼仕様になりそうですよね。
九尾の説明書
語り部九尾
種族:キュウコン 性別:♀ 特性:日照り
性格:生意気 個性:好奇心が強い
出身:ホウエン地方・送り火山 年齢:(恐らく)千歳
趣味:話すこと・旅をすること
好きなもの:人間
嫌いなもの:人間
主人公に当たる、千を超えたと思われるキュウコン。
夢特性、日照りの持ち主で、この特性と強い好奇心のおかげで
長い間旅を続けて来られた。
生まれはホウエンの送り火山だが、いつ生まれていつ死んだかは結局わからずじまい。
歴史書にちょくちょく、光を呼び、炎を纏った一匹のキュウコンの姿が乗せられているらしいが
それがこのキュウコンかどうかは不明。
ただし、色々と説明がつく部分が多いため、否定はできない。
人間が好きであると同時に、どこか嫌っている節がある。
旅をすることが好きで、その際にあった出来事を、誰かに話すことが好き。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
彼は地図の上にある赤いバツ印を指で示すと、きらきらと目を輝かせて言った。
「ここの森、虫ポケモンがいっぱいいるんだって」
元は虫取り小僧だったハルトに取ってみれば天国かもしれないが、時たま庭に出るキャタピーさえも看過できないのが私。もちろん、ゲットなんかしようとも思わない。第一に、私の手持ちポケモンはヘルガーにグラエナ、メタモンにメタモンにメタモンにメタモンと、その種類は豊富だが虫ポケモンは一匹もいない。グラエナも私と同じく虫タイプが苦手だし、メタモンに至っては気を抜くと虫にへんしんしてしまうし、ヘルガーだと明らかな力の差がついてしまう。虫ポケモンいなくなれ、とかいじめたりするのはかわいそうだし、べつにそういう趣味もない。ただ、そこにいるだけで怖い気がする。スピアーが大量発生してしまったときなどは、外に出るのさえ恐ろしくて敵わない。
「……」
「どうもコロトックがいるらしいんだよ!」
「へ、へえー……」
「俺、ずっとコロトックに憧れててね!」
「……そ、そうなんだー……」
「ゲットしたいなー!」
私が一番仲の良い友達はハルトだ。しかし、私たちは虫好きと虫嫌い。相反するものは互いに引き合う、なんていうけれど虫ポケモンだけはふつうに勘弁してほしい。もう何を言っても聞いてはくれないだろう。おー!なんてひとりで盛り上がるハルトを置いて、私は足元に寄り付いてきたグラエナを撫ぜた。
この前学校で、虫嫌いが進んでいる現状と問題についてレポートを書いた。実際、今虫ポケモンは肩身が狭く、それを愛する人たちもまた同じで。格好や種族でかわいいだのそうじゃないのと決められるポケモンたちの身を考えると、すごく悲しいことだと思うし、嫌だ。でも実際、私はそうしてしまっている。勝手に増殖していくメタモンはさておき、ヘルガーもグラエナも格好良いからとそれだけの理由でゲットしてしまった。今では良きパートナーたちだが――あの時の自分の行動は安易だったと思う。
あと、ほかの人の意見に、虫は何を考えているのかがいまいち分からないから怖い、嫌だ、というのがあったがそれを言うならメタモンだって何を考えているのかわからない。というか何も考えていないだろうが。何だかんだ私は虫ポケモン肯定派なのかもしれない。
「ハルトはなんで虫ポケモンが好きなの?」
「うーん、格好良いからかな」
「グラエナの方が格好良くない?」
「……まあ、そりゃそうかもしれないけど。ユキちゃん、虫タイプ嫌いだったっけ?」
「うん。ちょっとね」
「そっか。……でも俺はさ、初めて捕まえたのがビードルだったから」
「え。ビードルって毒針あるんでしょ? 危なくないの?」
「それ、何のためだと思う?」
質問を質問で返された。ハルトの表情はわずかに曇っている。私も真剣に考えることにした。
――ビードルに毒針があるのは、ちいさくて、目立って……あ、食べられてしまうから?コクーンになってもその危険性に変わりはないし、むしろサナギになることで危険度は増す。スピアーになって、ようやく恐れられる存在になる――そういうことなのかな。そのまま言葉すれば、ハルトは大きく頷いた。
「俺にとってみれば、俺のともだちを食べる鳥ポケモンの方がずっと怖いよ」
「……そうだよね」
「ユキちゃんだって、メタモンが食べられたら嫌でしょ?」
「うん。ぜったい嫌」
「だから、俺が守ってあげるんだ」
「……」
「虫だけどね、命だから」
ハルトの主張は一言で終わってしまうものだったけれど、秘められた想いは重く、強く私の胸に響いた。考えれば、私はずっと毛嫌いしていただけで、虫タイプを何も知らない。何だか恥ずかしい気持ちになった。結局嫌いとは言うものの虫ポケモンを捕まえたこともないし、最近は触ってすらいなかったっけ。
ハルトの指差す方には、赤いバツが光っている。彼の腰にいる彼のともだちも私とは相反すものだけれど、引き合うものでもあるはずだ。きっと。
「……森、いつ行く? 私、虫ポケモン捕まえたいかも」
そう言えば、ハルトは勢いをつけて私の手を握り、
「すぐにでも行きたいな。俺らも、ユキちゃんのともだちになってくれる虫ポケモンを探したいから!」
「私、メタモンみたいな子がいいんだけど」
「……いるかなあ。あ、でも虫だって性格はいろいろだからね」
「会ってみないと、わかんないね」
「うん! じゃあ行こう!」
とても嬉しそうに笑って、走り出した。
*
ねここです。
初めて見たとき、コロトックがなんかだめでした。でも最近、かわいいと思えるようになってきて嬉しいです。
小学生とか小さい子に虫嫌いが増えているらしいので、書いてみました。
虫を頑なに拒否し続けるのはちょっと悲しいですよねえ。
まずは、ヘラクロスとかからかな?ストライクとかも虫っぽくないし。
【でもやっぱりメタモンが好きなのよ】
【好きにしていいのよ】
溢れる豊かさが、人とポケモンとを結ぶ南の地・ホウエン地方。
その地に、死者の魂を送る、霧に覆われた聖なる霊山・おくりび山がそびえ立つ。
しかし、彼女がいる場所は、どんな大雨であろうとたちどころに晴れ渡り、見事にきれいな景色を一望できる程、澄んだ青空に恵まれるのだ。
「おや、これは珍しい。人なんて何時振りに見たか……その容姿では、まだ子どものようだが……何をしに来たんだい?」
現れた一匹のキュウコンは、何故だか言葉を介しており、見事なまでのその黄金色の九つの尾を優雅に揺らす。少しして、私がなぜここにいるかピンときたのか、くつくつと喉の奥で嗤う。こばかにされているはずなのに、なぜだか憎めなかった。
「なるほど、親と逸れたか。ふふ……迷い子、会ったのが私で良かったな。出会った獣によっては、その命、とうに失われておったぞ。まあ、あの濃霧では仕方あるまい……そうだな、久しぶりに人の子にあったのだ。私もある人の子の話をしよう。なに、退屈はさせぬ。私の旅話しだ。」
人の了承を得ず、勝手に話を始めたキュウコンは、どこか遠くを見つめながら、昔話を語り始めた。
「これは今から、五百年程前の話―…。」
×*×*×*×*×*×*×*×*×*
カントーより北にある、花冷える寒冷地。雪深いシンオウに引けを取らない程寒く、厳しい冬が襲う地。
時刻は恐らく、お昼頃。初夏の日差しが注ぐ、深緑の森を歩く、一匹のキュウコンがいた。そのキュウコンは、ただただ、宛てもなく、いたずらに右往左往と森の中を行き来してしていた。しかし、そのキュウコンは何かを捉えたのか、頻りに耳を動かすと、何かに近づいて行った。
そこにいたのは、一人の子どもだった。大きな木の根に腰掛けて、ひっきりなしに泣いている。着ている物は、土でところどころ汚れていたが、中々に上質な袴を身につけ、右眼に眼帯をしている、十才くらいの少年だった。何かを感じ取ったのか、キュウコンは顔を顰めた。
「……人の子よ、ここで何をしている。」
「!!」
「私の質問に答えろ……何をしている。なぜ泣いている。」
キュウコンが感じ取ったもの。それは血の臭い。この頃は戦が絶えず、刹那の瞬間にも、様々な命が刈り取られている時代であった。しかし、この少年は、まだ戦場にでる年頃では無い。なのになぜ、この少年から血の臭いがするのか。キュウコンはそれが何故なのかわからなかった。
「……眼、を。」
「うん?」
「右眼を、患った。……それから、母上が、まるで化け物を見るような目で、私を見始めた。」
「…………。」
「この眼を取ったら、優しかった頃の母上に戻ってくれると思った。だから、従者に頼んで、そして……。」
「抉り取ったのか、右眼を。」
少年は無言で肯定すると、膝に顔を埋めた。そのままの格好で、さらに話を続ける。
「……でも、母上は元の優しい母上には戻らなかった。私をさらに化け物扱いし、罵り、ついには
、私を、殺そうと……ッ!」
「……皆まで言うな……辛かったであろう、泣きなさい。思う存分。」
「ふっ……うわあああん!!」
キュウコンは優しく子をあやすと同時に、その母親に、ひどく怒りを覚えていた。
母親は、生まれ落ちた我が子を、何があっても常に愛し、時に諭し、そして何より、子の憧れでなければならないのだとキュウコンは思っている。しかし、泣きじゃくるこの少年の母親は、子が病で、その眼を失ったその日のうちに、汚れた者でも見るかのように辛くあたり、何よりも、殺そうとしている。しばらくして少年が落ち着いた頃、キュウコンはその口を開いた。
「……何とも愚かな母親か、どれ、人の子。いっそ私が、お主の母を喰らってやろうか。」
「それは……それはだめだ。」
「何故?命を狙われているのだろう?」
「確かに、哀しみの元凶は、母上だ…………でも、お腹を痛めて産んだのも、母上だ。母上がいなければ、私は……私は、今こうやって、哀しみを共有してくれた、貴女と出会っていない……私は……私は母上が大好きだ!たとえ蔑まれても、命を狙われても、それは、その気持ちは変わらない。」
「…………人の子よ。」
「…………?」
「名を……お主の名を聞いても良いか?」
「…………梵天丸。」
「梵天丸……良い名だ。人の上に立つに相応しい名だ。お前には、数多の人や獣を導き、そして操り、慕われる才があると見た。気が変わった。私はお前の母親を喰らうのは止めよう。その変わり、お前が死すその日まで、私はお主の勇姿を見届けたい。」
その言葉に、梵天丸は小さな左眼を丸々と見開いた。彼女の言葉に驚いたのか、口を僅かに開けて、呆けた表情をしていた。
「……獣の貴女が、私の母になると?」
「うむ、それも良いな。……梵天丸よ、お主は母が愛しいと言った。しかし、件の母はお前を殺そうと憚っている。……だが、1つだけ良い方法がある。荒治療になるが、構わんか?」
「……母がまた、私を愛してくれるなら。」
その答えに満足感を得たキュウコンは、にっこりと笑って、梵天丸の頬を舐めた。梵天丸は、くすぐったそうに、目を細めて笑う。
「そうだな、お主が二十になったとき。まだ母を愛していたら、そして、母がまだお主を嫌っていたら。またここに来なさい……その時に教えよう。」
「……わかりました。十年程、待てばよろしいのですね。」
「うむ。……必ず、お主の力になろう、梵天丸……さあ、もう行きなさい。」
梵天丸はキュウコンに促され、しかしまだ名残惜しそうに一度振り返った。キュウコンは穏やかに笑い、その炎で優しく彼を愛でると、森の奥へと引き返して行った。梵天丸は尚もそちらを見るが、自分を呼ぶ声を耳にすると、そちらの方へと走って行った。
×*×*×*×*×*×*×*×*
10年後。キュウコンは再び、花冷える寒冷地に訪れていた。今度は、自らの影に、たくさんのカゲボウズ達を忍ばせて。
約束の場所には、見事な鳶色の髪を持つ、思わず見惚れてしまう程の青年がいた。しかし、キュウコンはその青年こそが、10年前の小さな子だと気付いた。
「見違えたな、梵天丸。」
「!……お久しぶりでございます、゛母上゛。貴女にとっては僅かな歳月でも、私にとっては長い十年でした。」
「そうであろう……私の種族は千を生きる獣。私はまだ五百といっていないが、十年は確かに短い……血の臭いが濃くなったな。戦に出始めたのか?」
「ええ、二年程前から……名も新たに貰いましたが、貴女にはまだ、梵天丸と呼んでもらいたい……。」
「構わん。……それでどうだ?この十年。お主も、お主の母も相変わらず変わっておらんな?」
「はい。変わっておりませぬ……それで母上、如何なされるおつもりですか?荒治療と申しておりましたが……。」
そこでキュウコンは、自らの影に潜ませ連れて来た、たくさんのカゲボウズ達を呼び出した。彼は初めて見るポケモンだったのだろう。彼らは何者かと問うてきた。彼女は丁寧に、彼らカゲボウズ達の特徴やら何やらを教えると、改めて、梵天丸を見やった。
「……大きくなったな、我が子よ。」
「ええ、色々ありましたが、無事、ここまでこれました。これも偏に、母上のおかげです。」
「私は何もしていない。お主の頑張りに、想いに応えただけだ……良い結果を待っているぞ、梵天丸。」
「はい。……母上。何時かまた、貴女を母上と呼ばせてください。」
「……うむ。」
キュウコンは、どこか侘しい気持ちを抱えながら、梵天丸と、その影に移ったカゲボウズ達を見送った。それから、彼とキュウコンは、一度も会う事は無かった。カゲボウズ達が戻って来た頃、キュウコンは彼らに話を聞くと、どうやら思い通りに事が進んだらしい。それからの梵天丸の活躍は目覚ましく、キュウコンが見込んだ通り、彼は一国の主にまで上り詰めたという。
それから、およそ六十年後。梵天丸は、床に伏していた。
「……死に水を取に来たぞ、梵天丸。」
「母上……お久しぶりにございます。」
「やはり、お主と私では寿命が違うな……我が子の最期を見届けるのは、心が痛む。」
「こればかりは、いたし方ありますまい……私は最期に貴女にあえて、幸せです……母上、この先の五百年、どうか、私の変わりに……。」
「うむ、見届け、伝えよう……お主の事。そして五百の時を経て、再び、黄泉の地にて会おう、梵天丸……その時ゆっくりと話そう。私が歩んだ千年の人生、その全てを。」
「その時は、この梵天丸が、いち早くお迎えに上がります。」
「……待っているぞ、我が子よ……黄泉への道中、気を付けてな。」
「母上も……今より、五百年……どうか……お気を付けて……。」
その言葉を最期に、彼は静かに息を引き取った。その日は奇しくも、梵天丸とキュウコンが初めて出会った日だった。世が平和を迎えて少し経った、柔らかな初夏の光が差し込む、とある城の一室での出来事であった。
彼の激動の人生の背後には、度々、一匹のキュウコンの姿が噂されていたという。
×*×*×*×*×*×*×*×*
「……すっかり長引いてしまったな。もう夕暮れ時だ。そろそろ帰りなさい。ああそうだ、またここにきたいのなら、ヨマワルかカゲボウズにこう言いなさい。『語り部九尾に会いに来た』と。……梵天丸の名か?ふふ……゛独眼竜゛と言えば、伝わるであろうな。」
―
【書いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
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千 の 時 を 過ごした 一匹 の キュウコン が いた。
彼女 は 獣 の 身 で ありながら 各地 を 旅してきた と いう
今 は 亡き その キュウコン が 私 に 話して くれた
幾つもの 旅 の 記憶 を 私は ここ に 記そう。
○日本史×ポケットモンスター・語り部九尾○
もしもポケモンが、日本史に出てくる人物にあったり、戦等に参加していたら―…?
旅好きで人好きだけど、どこか憎めない、生意気で好奇心旺盛な、変わり者キュウコンのお話し。
【書いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
すみません!!こんな『んー、ヒマだしなんか投稿してみっかなー』程度の気分で考えた駄作に感想を下さったとゆーのに……!
返信遅れてホンッットにすみませんでした!
小生ものすごく反省しております……
これからはこのような事の無いようにしますのでどうかお許しを。
そして、自分の作品を気に入って頂いて光栄です。
もし、次のアイデアが浮かんだら(たとえ授業中であろうとも)ケータイでポチポチ投稿しようと思っております。
最後に、感想ありがとうございました!
【誠に申し訳ございませんでしたなのよ】
【カゲボウズかわいいよカゲボウズ】
【メタモンもかわいいと思うのよ】
> グラエナ多頭飼い、極貧生活、なんとも言えないこの生活感。素敵です。
> この生活ならしてみたい…黒いもふもふに囲まれたいです。
以前黒い犬を飼ってたんですがあんなのが一杯いたら幸せです。もふもふです。犬の毛皮はごわごわしているといいますがそれでももふもふです。
極貧でもグラエナに囲まれて幸せなのです!
>
> なるほどこれがボスとの出会いですか…!!
> マグマ団好きが再熱しそうです。素敵なお話ありがとうございます!!
ぜひマグマ団好きを復活させましょう!グラードン万歳!
コメントありがとうございました!
嵐のような人だった。
出会ったのは数か月前。きっかけは些細なことだった。
何もかもをかき消してしまうような雨の日。急いで家に帰ってきたら、あの人がそこにいた。勝手に人の家の軒下を使っていたのだ。
家の前に知らない人がいる。その状況がなんとなくうっとおしかったから、雨が小降りになった時にビニール傘を渡した。
そしたら次の日、律義に返しに来た。
その律義さに昨日邪険に扱ってしまった自分が何となく恥ずかしくなって、気がついたら、お茶でも飲んでいきませんか?と声をかけていた。
それから、あの人は時々家に来るようになった。
まるで昔からそうだったかのように、彼は私の生活の一部となった。
気がついたら、いつも彼のことが気になるようになってしまった。会えない日はどうしようもなく寂しかった。
最近疲れてるけどどうしたの?って訊かれたから。
眠れないのって答えた。
あなたのせいです。あなたのこと思い出して眠れなくなるんです。そんなことは言えなかったけど。
そしたらあの人、数日後にモンスターボールを渡してきた。
プリンの歌はよく効くから、これで眠るといいよって。
何一つわかってないなぁと思いながら、でもその優しさが嬉しかった。
一人になったその夜、プリンは歌ってくれた。
あの人のことを想いながら、私はぐっすり眠りにおちた。
とりあえず不眠は解消された。根本的な原因は何も解決しなかったのに。
そしてある日。旅に出ると一言だけ言って、彼は去ってしまった。
私の生活は元に戻った。まるで初めからあの人なんていなかったかのように。
でも、相変わらず自力じゃ眠れない。それは元には戻らない。
そしてニックネームをつけることのできないプリン。それだけが唯一の彼がいた証だ。
あなたのことを思い出して、今日も私はプリンに歌ってもらう。
あなたのせいで眠れないのに、今日も私はぐっすりと眠りにおちていく。
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ポケライフタグ期間終わってるのは百も承知ですが。
タイトルはモチーフとした楽曲からそのまま頂きました。内容はだいぶ変化させてしまいましたが。
【どうしてもいいのよ】
グラエナ多頭飼い、極貧生活、なんとも言えないこの生活感。素敵です。
この生活ならしてみたい…黒いもふもふに囲まれたいです。
なるほどこれがボスとの出会いですか…!!
マグマ団好きが再熱しそうです。素敵なお話ありがとうございます!!
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