マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.1479] 暮れ泥む空 上 投稿者:浮線綾   投稿日:2015/12/26(Sat) 19:32:01   38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



暮れ泥む空 上



 ピカチュウを肩に乗せたセッカは、12番道路のフラージュ通りを越え、ヒヨクシティにやってきた。
 ヒヨクは高級リゾートとして有名だ。
 アズール湾に面した港は印象派絵画の発祥の地であり歴史ある商業港だが、現在はクルーズ港として有名である。
 華やかなヨットハーバー、広大なビーチ、丘の上からの優れた見晴らし。ポケモンジムをも擁するこの街は、トレーナー達の富裕層への憧れをかき立てる。
 セッカも目を丸くして巨大なクルーズ船を見物しつつ、港をてくてくと歩いていた。ピカチュウがぴくぴくと耳を動かしながら、空を気にしていた。

 天気はあいにくの曇り、今にも雨が降り出しそうに黒い雲が低く垂れこめている。空は黒い灰色、けれど西日は家々の壁を山吹色に照らしている。雨の中の野宿はさすがに難しいのと、そろそろ日が暮れるのと、二つの理由によってセッカは今日はヒヨクのポケモンセンターに宿泊することを余儀なくされている。
 ヒヨクシティのポケモンセンターに行くには、シーサイド北にある駅からモノレールに乗るなり、自力で丘を越えるなりしてヒルトップへ行かなければならない。
 お香屋の不思議なにおいを嗅ぎ、きのみの屋台から目敏くきのみを数個かすめ取り――もちろんジョウト出身の養親に育てられたセッカにチップを渡すという概念は存在しない――、港に停泊する白い船を横目に見つつ、セッカは北へと向かった。


 広い港の中のとある岸壁に、何やら物寂しそうな男の背中を発見する。
 岸壁に背を丸めて腰かけた男は、暗い雲の西の切れ目から差し込む夕日を見つめていた。
 アズール湾は静かに波立って、遠くラプラスの歌が聞こえる。
 男は静かに囁いた。おーい。
 おーい。
 誰を呼んでいるのだろう、ラプラスだろうか。張りのない声は微かな波の音、風の音にすらかき消されそうだ。胸の奥から誰かを呼び覚ますような声だ。――そのような事を考えつつセッカが静かに男の背後をすり抜けようとすると、不意に男が背後を振り返った。
 セッカは男とばっちり目が合ってしまった。
 すると吃驚した男が岸壁から立ち上がり損ねて、海に落ちた。

「うきゃあああああああ落ちたァァァァァァァァ――!!」
 セッカはほぎゃほぎゃと慌てつつ、海に落ちた男を岸壁に引っ張り上げる。
 髪や髭、着膨れた衣服をぐしょぐしょにした男は、彼を助けた張本人であるセッカに異常なまでの怯えを示した。
「ど、どどどどどどどうもありがとうございます」
「さ、寒いっすか? ふ、フレアドライブお見舞いしましょうか?」
「ひいいいいいいいいいお許しをぉぉぉぉぉぉぉ」
 男の震えは怯えのためだけではない、寒さのせいもあるだろう。そうはいえども男がセッカに異常な怯えを示していることに変わりはない。セッカが何を申し出ても「すみません」「許してください」、これでは埒が明かない。


 セッカが困り果てていると、北のシーサイドステーションから軽い足音が聞こえてきた。
「――あ、セッカじゃん! と、タテシバさん見つけたぁ!」
「ぎゃあ。ルシェドウだぁ!」
 セッカはびっくりしてしまった。肩の上ではピカチュウも警戒している。ポケモン協会の職員はセッカたち四つ子の敵だから、極力会わないようにしなければならないのに、ついうっかり出会ってしまった。
 そのようなセッカの内心の葛藤を知ってか知らずか、鉄紺色の髪のルシェドウは思い切りセッカに飛びついてきた。
「四つ子コンプリィィィィ――ト!!」
「ほげ!?」
「イヤッホウついについにルシェドウさんはすべての四つ子に旅先で巡り会っとぅあ! セッカだセッカだピカチュウちゃんだぁ! 可愛いなぁーよしよーし」
「いたい! いちゃい!」
「びがぁ――!」
 セッカとピカチュウは、ルシェドウの熱烈な抱擁を受けて目を回す。ルシェドウは細身のくせにとても力強い。セッカを窒息させてそのまま捕まえてお持ち帰りする気ではないかとセッカが疑うくらいである。
 しかしはたとセッカは気づいた。何か柔らかい。


 男の茫然としたような呟きが聞こえた。
「……四つ子?」
 セッカはルシェドウの腕の間から何とか顔を出し、男にアピールした。
「いかにも、俺たちは四つ子! くわどらぷれっつなのです! ……ははーん、さてはおっちゃん、れーやかきょっきょかしゃくやにブチ切れられたクチだな!?」
「ふ、フシギダネを連れた奴は……」
「あー、きょっきょね! きょっきょ怖いよね。でもね、きょっきょにキレられる奴って、大概そいつの方が悪いんだよね!」
 セッカはにっこりと笑ってそう言い放ってやった。すると収まっていたはずの男の震えがますます大きくなった。
 ルシェドウが腕の中のセッカの頭をこつんと小突く。
「こりゃ。タテシバさんはきちんと警察に行かれて、ちゃんとお咎めを受けられたの。だからうるさく言わないの」
「うわぁ……あんた、前科持ちかぁ……。え、ってことはつまり、あんたはきょっきょに何かやって、返り討ちに遭ったわけだ! ぶはっ、だっせぇ!」
 セッカは大喜びである。片割れの活躍は嬉しいものだ。
 セッカはもぞもぞとルシェドウの腕から逃れると、ピカチュウを肩に乗せたままぴょこんと跳ねた。
「ルシェドウはタテシバのおっちゃんと用事? 何してんのルシェドウ、榴火のことちゃんとやってるわけ?」
 セッカが釘を刺すと、ルシェドウは小さく首を縮め、タテシバの目が急に細められた。
 その二人をきょろきょろと見比べ、セッカはぴょこぴょこ跳ねる。
「あ、なになに、榴火の話すんの?」
「……ルシェドウとやら、てめえ、このガキゃあいったい何だ」
 タテシバの声が急に低くなった。先ほどまでセッカにびくびくしていた時とは違う、ごく自然な、疑念に満ちた声だった。
 ルシェドウは溜息をついた。
「すみませんタテシバさん。榴火の被害者の子です。会うつもりはなかったけど、偶然会っちゃいました」
「ふん、どうだかな。てめえらの差し金じゃねえのか。この俺に何をさせようってんだ。今さらあいつはどうにもならねえよ」
 そこでさすがにセッカも合点がいった。確か榴火のラストネームはタテシバというのだ。
 男をずびしと指さした。
「あ、あんたもしかして、榴火のパパンかぁ――!!」
「うるせえガキだな。緑のはまだ知的だったぞ」
「このダメオヤジめ! あんたのきょーいくが悪いから、れーやも俺も危ない目に遭ったんだぞう!」
 セッカはぷりぷりと怒り出す。ピカチュウもその肩の上で同調して騒ぎだす。
 するとタテシバはセッカを見下ろしてふんと鼻で笑った。
「あいつぁ俺がどうにかできるガキじゃなかったさ。昔からな」
「せきにんとれ! べんしょーしろ!」
「びぃが! びがぢゅう!」
「タテシバさん、詳しくお聞かせ願えますか」
 真面目な声音で口を挟んだのは、ルシェドウだった。



 セッカとタテシバとルシェドウの三人は、ホテル・ヒヨクのレストランへと移動した。
 タテシバとルシェドウはもともと面談の約束を取り付けてあったらしい。その面談の場がレストランであることを聞き出して、セッカはむりやりそこに割り込んだ。ルシェドウにレストランの美味しい食事を奢らせ、夜はホテルのルシェドウの部屋でもタテシバの家でも、どちらかに潜り込めばいい。宿も食事も、これで確保は完璧だ。
 セッカとピカチュウは本日の旅の成果にほくほくしている。
 レストランは夕暮れの海に面して素晴らしい眺めである。
 セッカはそわそわとナイフとフォークを持ちながら、タテシバを促した。
「早く! 榴火のこと早くしゃべって!」
「うるせえガキだな……」
「まったくもう、きょっきょと違って俺が馬鹿だと気付いた途端にその態度とか、失礼しちゃうわね!」
「てめえ、あの緑のより馬鹿なのか……」
「いいから榴火のことをお話し! でないとピカさんの雷くらわすから!」
 すると、高い椅子に座って三人と同じテーブルについていたピカチュウが、タテシバを見やってにんまりと凶悪に笑んだ。
 にこにことセッカとタテシバを見守っていたルシェドウが、料理が運ばれてきたのを皮切りに、タテシバに話を促す。

「タテシバさん、最近は榴火とは連絡を取り合っていらっしゃいますか?」
「とってねえよ。俺が連絡手段持ってねえから」
「では、事件以降は――」
「無理。あいつは普通に旅してるし、俺はあの女に追い出されるし」
「榴火は事件後も旅を続け、タテシバさんはアワユキさんに家から追い出された、と。……それで榴火との連絡もつかなかったわけですね。お寂しいとかはありませんか、息子さんと連絡が取れないなんて」
「別に。あいつ頭おかしいし。俺もクズ親父だから、関わらん方が互いにいいんじゃねえの」
 タテシバは淡々と、豪勢な夕食にありついていた。セッカも同様である。まさかルシェドウのポケットマネーではないだろう、ちょっと話を聞くだけでこれほどにも豪華なレストランを使うのだからポケモン協会はリッチもいいところである。
「では、事件前は榴火との仲はいかがでしたか?」
「知らん。あいつも俺もどっちも旅してたしよ、たまのレンリでも滅多に会わんかった」
「当時のご自宅はレンリタウンでしたね。榴火が旅に出る前は、どのようでした?」
「覚えてねえよ。あいつレンリに置いて、俺は旅してたしよ」
「何それ、榴火の事ほったらかしにしてたわけ? ひっでえ! 親の風上にも置けねえな! 親の顔が見てみてぇわ!」
 セッカが口を挟んでぷぎゃぷぎゃと怒ると、ピカチュウも小さな掌でテーブルを叩いて怒り出す。
 ルシェドウはろくに食事もせずに、考え考え質問を続ける。
「タテシバさんはいつから、レンリタウンに家を?」
「最初の家内がレンリだったから、そっちに家建てた。榴火んことは家内に任せてたが、気付いたら家内が消えてたから失踪届出して婚姻解消。次の家内もそこに住まわせてた」
「ねえ、消えたって何!? 消えたって何なの!!?」
「うるせえぞガキ。……最初の家内は消えた。家内の実家にもいなかった。トレーナーじゃなかったから急に旅なんざ考えられねえ、他の男に連れてかれたか。……そんときゃ榴火も三つか四つか、まださすがに何もできねえだろ」
 タテシバはこともなげにそう言う。
「んで、まあそのあと割とすぐにアワユキとの間に梨雪が生まれて……アワユキと梨雪と榴火は、レンリで暮らさしてた」
「アワユキさんや梨雪さんは、榴火とは仲が良かったですか?」
「知らん。全然興味なかった。普通じゃねえの」
「アワユキさんはトレーナーでしたよね。彼女はタテシバさんと結婚なさってからは、旅はされてなかったんですか?」
「それも知らねえ」

 セッカはマイお箸で人参をつまみながら、ルシェドウとタテシバの問答に耳を傾けていた。
 タテシバは息子の榴火に対して、関心がなかったようだ。すべて前妻や後妻に任せっぱなし。自分はただ気の向くままに、ポケモンを連れて旅をしていた。
 しかしタテシバの気性も、なんだかセッカには親しみがあった。家庭には争いがある。毎日同じ人間と顔を突き合わせなければならない。四つ子は養親のウズを敵に設定することによって四人の間の結束を保っていたが、タテシバもそのように家庭の外に逃れることによって妻や子供と衝突しないようにしていたのかもしれない。
 榴火は、継母のアワユキと異母妹の梨雪と共にレンリで過ごした。その間の様子は全く分からない。タテシバはこんな様子であるし、アワユキも梨雪ももうこの世にはない。
 しかしセッカが安易に想像するに、榴火は寂しかったのではないだろうか。それがなぜ妹や人々を傷つける結果に至ったのかは想像もつかなかったが。そしてセッカが榴火に同情を注ぐ理由にもならなかったのだが。
 ディナーが一通り終わり、食器が片づけられてデザートを待つという段になり、ルシェドウはさらに話を核心に近づけた。
「じゃあ、事件の直近の榴火についてお話を伺いましょうか」


 ルシェドウは事件の際、榴火を弁護した。その時はタテシバと話をすることはなかった。タテシバも、ミホやアワユキらと同様に、榴火の処罰を強く求めているものとルシェドウが早合点したためだ。会ったところで殴りかかられるものとてっきり思っていた。けれど榴火の弁護士が証人としたのがタテシバであり、裁判当時になってルシェドウは度肝を抜かれたのである。
 タテシバは子供に特別な愛情を注ぐことはなかった。我が子に対しても客観的だった。そして彼は現代のトレーナーだった。アブソルに災害が伴いがちであることを理解していた。アブソルのトレーナーばかりが糾弾されるのをよしとしなかった。
「お母さまや奥さまとは軋轢があったでしょうに」
 ルシェドウが溜息をつく。
「実際、お袋には離縁され、アワユキとは離婚したがな」
「そうまでしてタテシバさんは榴火を守ろうとなさったのですね?」
「いや、なんか弁護士から金貰えるってんで、そう言っただけだ」
 そのタテシバの身も蓋も無い返答にセッカは崩れ落ちた。
「すげぇ。やべぇ。見習いたい、この悟りを開いたが如き人嫌いの境地」
「こらセッカ、タテシバさんの前で失礼だけど、不健全だよ。セッカはウズさんたちを大切にしなさいよ」
「へいへい。あ、じゃあ榴火のばーちゃんやかーちゃんは、榴火のこと罰してほしかったんだ」
 そこでセッカは閃いてしまった。
「あ、分かった! アワユキはさ、榴火のことはほったらかしにして梨雪のことばっかり可愛がってたんだよ! だから榴火は梨雪に嫉妬して、殺しちゃったんだ!」
「ちょっとセッカ、声を小さくして」
 ルシェドウに窘められ、セッカはこそこそと囁く。
「榴火はきっと、継母のアワユキの気を引きたかったんだ。アワユキの可愛がってる梨雪を殺せば、アワユキに愛されるにせよ憎まれるにせよ、榴火はアワユキに認識されることになる。なんか、好きな子を虐めたくなるっつー心理じゃん?」
 セッカは一人で頷いた。
 榴火はアワユキに愛されたかったのだ。
 愛されないまでも、自分を見てほしかったのだ。認識してほしかったのだ。アワユキにとっての何者かになりたかったのだ。
 もしかしたら母親として慕っていたのではないのかもしれない。遠い昔にウズから聞いた、源氏物語の主人公だって、父帝の後妻に恋心を抱いたではないか、きっとあれと同じ心理だとセッカは納得してしまう。
 だからアワユキを自殺に追い込んだ直接の原因であるサクヤやレイアを、榴火は恨んだ。
 セッカはとりあえずそういう事にしておいた。


 ルシェドウはうんうんと頷いて、何やら考え込んでしまった。一人だけ夕食がほとんど進んでいないので、セッカは横から箸を伸ばしてルシェドウの皿から人参をかすめ取った。
 塩胡椒で味付けされた茹で人参をもぐもぐしながら、セッカは勝手にタテシバに質問をし続ける。
「じゃあさ、なんであんたはクノエのポケセンに溜まってたわけ?」
 その質問をすると、タテシバはぎくりと身を竦ませた。
「……お、おま、緑のから聞いたんか」
「うん。きょっきょから泥棒したのって、あんたでしょ。なんでそんなことしたの? レンリに家があるんだろ? っつーか、トレーナーとして旅してたんなら、バトルで真面目に金稼げって話」
 タテシバは背を丸め、恨めし気にセッカを睨んだ。なかなか迫力のある視線にセッカはどぎまぎした。
「……っせぇよ。てめえみてえなガキにゃ関係ねえだろうが」
「関係なくはないし。きょっきょは俺の片割れだもん。それに、俺だってバトルで勝てなくなったら、ポケセンで乞食になるしかない。俺はそうなりたくない。だから、なんであんたがそうなったのかを知っておきたい、参考までに」
「乞食とか、失礼すぎるぞガキが……」
 セッカが質問の意図を述べている間に、タテシバも思考をまとめたらしい。セッカの求めに応じて話し出した。
「……レンリの土地と家は、アワユキと離婚するときにくれてやった。あの女、榴火を俺に押し付けるだけ押し付けといて、当時の俺の全財産をかすめ取りやがった……」
「すげぇ。じゃ、あんたが榴火を育てなきゃ駄目だったんじゃん?」
「……んなわけねえだろ。当時は榴火も十過ぎて成人だ。戸籍上榴火が俺んとこにいるってだけだよ」
「よくわかんない。じゃあおっさんは榴火の事件のあとも、普通にトレーナーとして旅してたんだ?」
「……そうだよ。だが七つ目のバッジがどうしても取れん。とうとう金が底を尽いた。その時たまたまいたのがクノエだった。……そんだけだよ。バトルで勝てなきゃ死ぬだけだ。そんで盗みとかも働いて、ブタ箱行きよ。てめえもせいぜい気ぃつけな」
「あい!」
 セッカは素直にこくりと頷いておきながら、直後にぐりんと首を傾げた。
「……おっさん、スランプになっちゃったってこと?」
「スランプっつーか、俺はもう駄目だわ」
「……駄目になった?」
「あー駄目駄目、これ以上は酒持ってきやがれ。酒が無くて話せるかぁこんなもん」
「……つまりタテシバのおっさんは、榴火や梨雪やアワユキがあんなことになって、ショック受けてんだな?」
 セッカは勝手に納得してしまった。

 するとタテシバが急にフォークを掴み、セッカに投げつけてきた。セッカはぴゃああと悲鳴を上げ、音を立てて立ち上がる。周囲の客からも小さな悲鳴が上がり、白けた視線がそのテーブルに注がれた。
「ぎゃああ――! ごめん! ごめんて! でも図星なんだぁ!」
「……ぅぅうっせぇんだよこのガキが!! 調子乗んなや! 何も知らねぇくせに知ったような口きいてんじゃねぇよ!!」
「タ、タテシバさん、落ち着いてください」
 そこにそれまで沈黙していたルシェドウが慌てて割り込む。
 タテシバは急激に興奮した様子でナイフを逆手に持ち、ぽかんとしているセッカに今にも組みつきそうな様子である。ルシェドウがタテシバを慌てて押さえる。
「タテシバさん、どうしたんですかっ」
「うっせぇこの糞野郎! 何だこのクソガキは! 聞いてねぇぞ! ぶっ殺してやる!」
「……あ、分かっちゃった」
 セッカはピカチュウをそっと抱きしめながら、怒り狂うタテシバを見つめ、ぼそりとひとりごちた。
 ――榴火の凶暴性は父親譲りだ。


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